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犬猿 (2017):映画短評

犬猿 (2017)

2018年2月10日公開 103分

犬猿
(C) 2018『犬猿』製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

なかざわひでゆき

「きょうだい」とは良くも悪くも自分自身の写し鏡

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 真面目で堅実な弟と、落ちこぼれでヤクザな兄。美人だけどオツムの弱い妹と、仕事は出来るけど見た目の冴えない姉。そんな2組の「きょうだい」の因縁バトルを描いたコメディである。
 赤の他人だったら無視するなり距離を置くなりすれば済むレベルだけど、身近な近親者だからこそ無性にイラっとする「目の上のタンコブ」感が絶妙。些細ないざこざが雪だるま式に膨れ上がりこじれていくのだが、結局のところ、良くも悪くも「きょうだい」って自分自身の写し鏡なんだよね、と気づかされるわけだ。
 パッと見だけでハマリ役のニッチェ江上敬子は予想以上の好演。ただのいい話で終わらせないオチもグッドだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

「ほっこり」と「緊迫」。そのテンポよきメリハリ感

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作『ヒメアノ〜ル』ではコミカルで軽快なムードが、真ん中で暗転。後半とのギャップで驚かせた吉田恵輔監督が、今回は軽めの日常描写に、ちょこちょこと危険な事件が起こりそうな気配を挿入。そのハイテンポな転換が、緩急自在のジェットコースターのようで、観る者の好奇心を途切れさせない。兄弟姉妹の確執と、スリルの予感の波に心地よく飲み込まれるのは、巧妙な脚本はもちろん、キャストと役の恐ろしいまでの一体感の成果だろう。

真面目すぎる自分が嫌になったり、よかれと思った行為が無下に扱われたり……。“肉親あるある”なネタを詰め込んで人間の本性を追求しながら、小むずかしい物語になっていないのも好印象。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

『さんかく』から“しかく”だけじゃない!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

根強い人気を持つ『さんかく』から8年、吉田恵輔監督が今度は男女4人の愛憎劇を描く本作。しかも、ライバルとしての兄弟・姉妹という意味では、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』の発展形であり、『ヒメアノ~ル』を経て、新井浩文演じる長男を巡るバイオレンス描写の巧さが映える。そういう意味では、得意ジャンルにして、今の吉田監督だから描ける人間ドラマに仕上がった。メジャー大作への出演が続いてた窪田正孝も古巣に戻ってきたかように活き活きとし、時折魅せる狂気も鳥肌モノ。そして、映画初出演にして、ベテランの貫禄すら漂わせる江上敬子。入口と出口の違いも魅力的な吉田作品だが、今回も冒頭から腰を抜かす仕掛けが待ち受ける!

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

気が早いようだけど傑作なのでとりあえずのメモ

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

作った映画全てが面白い吉田恵輔監督が、高いハードルの期待に堂々応える新作だ。一見「似ていない」兄弟・姉妹の相互コンプレックスを主軸にしつつ、狭い生息地域のしょ~もない人間模様だけで、世界はこうなっている、というメカニズムを描き尽くす。吉田イズムの見事なヴァリエーションだと思う。

「その鞄、服に合ってないよ。もっと小さい方がいいんじゃない?」など何気ない台詞がいちいちリアル。この先は地獄、という一歩を一緒に踏み込んでしまうギリギリアウト感も健在。黒ヨシダと白ヨシダのせめぎ合いの中、「いい話」に旋回してもあくまで腹八分目。役者良すぎ。新井&窪田の巧さはもちろん、ニッチェ江上&筧は名優に覚醒!

この短評にはネタバレを含んでいます
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