ADVERTISEMENT

マロナの幻想的な物語り (2019):映画短評

マロナの幻想的な物語り (2019)

2020年8月29日公開 92分

マロナの幻想的な物語り
(C) Aparte Film, Sacrebleu Productions, Mind's Meet

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

くれい響

“小さいおともだち”はトラウマ必至!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

老人介護に、マウンティング好きな鬼嫁、シンママの生活苦など、わんこから見れば、珍しいかもしれないが、人間からすれば、ぜんぜん幻想的じゃないハードな現実を叩きつける、“輪廻転生しない『僕のワンダフル・ライフ』”。この世の者と思えぬシュールなキャラ描写や、飼い主の曲芸師がスカウトされるシルク・ドゥ・ソレイユ(太陽のサーカス)ならぬ「月のサーカス」など、わんこの運命を変える「月」の存在、悲しすぎる主題歌まで、“小さいお友達”はトラウマ必至! 中盤、やや単調になるものの、2D&3D融合のクライマックスや、『死霊のえじき』のバブ級にカッコいい敬礼(自分を見捨てた父親譲り!)に泣かせられ、★おまけ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

可愛いだけの動物アニメじゃありません

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 人間の都合によって棄てられたり拾われたりしながら、飼い主のもとを転々としていく小型犬マロナの一生を描いたフレンチ・アニメーション。まずは、その圧倒的にマジカルな作画デザインに目を奪われる。マチスやルソーに代表されるフランスのフォービズムと、グロスやカノルトといったドイツの新即物主義を融合させたような映像美は、なんともカラフルかつ自由自在にして天衣無縫。ペットを取り巻く過酷な環境を通じて、弱肉強食の世界において生きることの目的を探り、幸福の意味を問うストーリーも、単なる癒し系動物アニメに終始しない奥深さがある。「幸せは苦しみの休息に過ぎない」というマロナの言葉がズシンと胸に響く。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

すべての曲線がどこまでも伸びやかに動いていく

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 音楽を聴くときに、旋律が変化していくのに身を委ねるように、色と形が変化していくのに身をまかせて、その変わっていくさまを味わう映画。その変化は途切れることなく、少しも静止することなく、速度は変わるが、常に滑らかなままで、見ているこちらの気分もその動き続ける波に揺られて変化し続ける。とくに、語り手のマロナの最初の飼い主である曲芸師の姿が、輪郭がなく、色と曲線が集まることによって形をなしていて、その曲線たちがほどけたり、また集まったりしていくさまの心地よさ。マロナのたどる物語は暖かいだけのものではないが、マロナの意識同様、色彩は常に明るく鮮やかで、曲線がみなどこまでも伸びやかに動いていく。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT