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国葬 (2019):映画短評

国葬 (2019)

2020年11月14日公開 135分

国葬
(C) Atoms & Void

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

平沢 薫

普通の映画体験とはまったく別の何かを体験する

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 この映像を目の前にすると、普通の「映画を見る」という体験とはまったく別の何かを体験することになる。監督が、1953年のスターリンの国葬の記録映像を大量に発見してそれを編集した作品で、ナレーションもなく、音声もその場の音を録音しただけの記録映像、説明もなければストーリーもない。しかしその映像と向かい合っていると、そこに映し出されているものが何なのか、そこにいる多くの人々の顔に浮かんでいる表情にはどんな意味があるのか、目の前にある映像から何かの意味、何らかのドラマを読み取ろうとせずにはいられなくなるのだ。その体験が新鮮で、映画を見るということについて新たな何かが発見できそうな気がしてくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

『死霊魂』と並ぶ今年のドキュメンタリーの目玉

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

猛烈に凄いS・ロズニツァ監督の3選――どれも必見だが1本選ぶなら『国葬』だろう。1953年、ソ連全土で催された壮大な儀式。『スターリンの葬列狂騒曲』が舞台裏をブラックコメディとして描いた「本物」の模様を、無添加のフィルムでひたすら映し出していく。

内容は全て「ありもの」の記録素材だが、編集で「監督の目」を導入すれば鮮烈な世界像が浮き上がる。今年日本公開された『赤い闇』と繋げたい『粛清裁判』も含め、「アーカイヴァル映画」とはアーカイヴ映像を使ったダイレクト・シネマの意に近い。今の我々はスターリニズムの真相や評価の逆転を知っているからこそ、「群衆」の圧倒的多元性を逆算の目で観察することができる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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