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ノースマン 導かれし復讐者 (2022):映画短評

ノースマン 導かれし復讐者 (2022)

2023年1月20日公開 137分

ノースマン 導かれし復讐者
(C) 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

猿渡 由紀

カットなしの長回しで撮影したアクションシーンに感嘆

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

ロバート・エガースのキャリアで最大規模の作品ながら、じわじわと迫り来る恐ろしさ、不穏な雰囲気、モノクロームの色調など、彼らしさはあちこちに。古代アイスランドのサーガに強いオマージュを捧げる今作は、原始的、神話的で、セリフも詩的。それはアクションシーンの撮影法にも貫かれている。子供も含む大勢のエキストラが登場し、誰かが馬から落ちたりもする混沌とした状況の中で主人公がバトルを展開するシーンも、全部カットなしの長回しで撮っているのだ。演技もすばらしければ、ヘリコプターでしかたどりつけなかったという人里遠く離れたロケ地も美しい。ぜひビッグスクリーンで体験するべき壮大なエピック映画。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

『LAMB/ラム』の脚本家も加わり、不穏さ倍増!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

オールスター競演の歴史活劇大作だろうが、いつもの撮影マンとともに、お得意の不穏な空気感を醸し出す、通常運転すぎるロバート・エガース監督。しかも、今回は『LAMB/ラム』のショーンが共同脚本で参加し、彼とはバンド仲間でもあったビョークを飛び道具として用意するなど、いろんなヤバさが相乗効果を起こしている。内容的には「ハムレット」の元ネタだけに、同じく闘争本能剥き出しのアート系ヴァイキング映画『ヴァルハラ・ライジング』に比べれば、かなり観やすい。しかも、ブレイクして古巣に戻ってきたアニャ・テイラー=ジョイの役柄に関しては監督の当て書きだけに、恐ろしいほど神々しい彼女も堪能できる!

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

強烈なバイオレンスとドラマが寒々しさの中に映える!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 撮ろうと思えばハリウッド映画らしい痛快復讐アクションにもできたはず。そこはR・エガースの監督作、冷たい炎であぶり出すようにダークで強烈なバイオレンスを叩きつけてくる。

 『ウィッチ』『ライトハウス』と同様の色味を感じさせない映像世界。シェイクスピアの「ハムレット」の基になった北欧伝説の寒々しい映画化に、このトーンはピッタリとハマる。

 映像こそ淡色だが、復讐心に憑かれた主人公の虚無のあぶり出しは鮮やかで、見ていてグイグイ刺さってくる。エガースの過去作もそうだったが、人間が愚かな生き物であることを熟知している才人の仕事。『コナン・ザ・グレート』のダークサイドとも言えよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

A24出身らしく刺激たっぷり。神話の荘厳さ、肉体の生々しさ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

人間の戦闘の本能はこうだ、とばかりに繰り出されるアクションの数々は、観ているこちらも痛みを感じる生々しさの究極を突いてくる。それらが北欧らしい荒涼とした曇り空、幻想的自然をバックに展開するので、流れる血は赤というより泥炭の黒。生々しさはどこか神話的な魅力をまとっていく。生首がしゃべったり非日常のファンタジー要素も違和感なく溶け込み、独自の世界観に溺れていく。

殺された父の復讐を人生の宿命とした男。その悲壮な決意が揺らぐ瞬間にこそ、ドラマチックな味わいが。

監督のR・エガースは過去2本がA24作品。今回は違うが、いい意味での怪しさ、振り切れたテイストが、A24っぽくて何だか微笑ましくもあり。

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平沢 薫

人間が獣に近く、呪術と共に生きている

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 泥と血。暴力と呪い。人間がもっと獣に近い生きもので、呪術に近いところで暮らしていた頃の物語。血の意味が今とは違い、復讐の意味も現在とは違う。戦場で死を目前にした戦士たちが歓喜を持って迎え入れる"戦死者を運ぶ者"ヴァルキリーが、強烈な形で出現し、そこにある死は安らぎとは何の関係もない。そういう世界に没入できる。

 北方の陽の光は弱く、遠くで噴火し続ける火山が噴き上げる灰のため、空はいつも曇っている。海はいつも冷たく荒れ狂う。その光の少ない昼とは対照的に、夜は闇の濃度が濃く、そこで燃える火が揺らめきながら強い光を放つ。その光に、アニャ・テイラー=ジョイの目が放つ強い力が呼応している。

この短評にはネタバレを含んでいます
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