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セールス・ガールの考現学 (2021):映画短評

セールス・ガールの考現学 (2021)

2023年4月28日公開 123分

セールス・ガールの考現学
(C) 2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

ミルクマン斉藤

モンゴル≠遊牧民!主演の可愛さにメロメロ。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

2022年の大阪アジアン映画祭でピカイチだった傑作。モンゴル映画というと大草原や遊牧民の移動住居パオが思い浮かぶが、これはまさにニューウェイヴ、都会の話。主人公は原子工学を学ぶ女子大生なのだが、友人の代わりに都会のセックスショップで1ヶ月バイトすることになる。そのうち、元バレリーナだという年老いたショップオーナーと心を通わせて、セックスのことだけではなく人生の多くを学ぶことになる。その繋がりがむしろ本作の主題であって、この交流過程が繊細で機知に富んでいる。主役のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルのキュートさにノックアウトされること必至。ピンク・フロイドの「狂気」がとても良い味出しています。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

モンゴル発、ポップでユーモラスで都会的なシスターフッド映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 地味で垢抜けなくて自己肯定感低めな女子大生が、ひょんなことからアダルトグッズショップでアルバイトをすることになり、自由奔放で浮世離れしたオーナーのオバサマから自分らしく胸を張って生きるための秘訣を学んでいく。まるで北欧辺りのインディペンデント映画を思わせるような、ポップでユーモラスで都会的なシスターフッド・ムービーだが、それだけにこれがモンゴル映画というのは嬉しい驚き。古いジェンダー規範の概念が根強く、セックスに保守的なモンゴル社会を背景にした、自己を模索する若い女性と酸いも甘いも噛み分けた中年女性の、世代間ギャップを超えた友情が微笑ましい。とても良い映画!

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

モンゴルの風を感じさせない、ポップなリケジョ成長譚

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

男根のメタファーであるバナナと、スケボーと、ヘッドホンからの音漏れ。モンゴルの風を感じさせないポップな冒頭から始まる、ゲジ眉リケジョの成長物語。推しに弱い童顔ヒロイン・サロールと、彼女をオトナ世界へと誘う圧が強いオーナーカティアとの関係性は、『千と千尋の神隠し』における千尋と湯婆婆のようだが、『メタモルフォーゼの縁側』を思い起こさせる年の差シスターフッドな関係に発展。やっぱり登場する草原やバス車中などで、MV風にサラリと物語の中に溶け込む地元ミュージシャンMagnolianによる楽曲もいいスパイスになっているが、各エピソード的は新鮮味に欠け、後半にかけての失速感も否めない。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

モンゴルZ世代の都市生活レポート

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

この映画の新鮮さに驚いてしまうのは、内モンゴルの草原や遊牧民といったステレオタイプ=古い偏見に自分が囚われているせいかと考えさせられた。モンゴル国の首都ウランバートルの都市空間にポップな音楽が重なる瑞々しい青春映画。慣習や環境の抑圧から自己を開いていく大学生のヒロイン像には、監督のジャンチブドルジ(男性)の自画像が反映されているというのも興味深い。

メンターとなるのがアダルトショップのオーナーのカティア。ロシア語も使う彼女は旧世代の在野インテリといった風情で、ソ連との関係の歴史が地政学として大きく働く。新世代の主人公に渡すバトン=「教養」がピンク・フロイドの『狂気』なのも絶妙だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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