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シック・オブ・マイセルフ (2022):映画短評

シック・オブ・マイセルフ (2022)

2023年10月13日公開 97分

シック・オブ・マイセルフ
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.5

くれい響

「他人の不幸は蜜の味」では終わらない深み

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

短編時代から承認欲求にとりつかれた人間の生態をモキュメンタリー形式で描いてきたクリストファー・ボルグリ監督だが、今回はあえてドラマ形式。副作用が酷い薬品の服用という自傷行為で、タイトル通り精神疾患の領域まで沼っていく姿が描いていくわけだが、一見地雷系には見えないヒロインのかまってちゃんぶりが、しっかりホラー化。油田事故であたふたする『バーニング・シー』に続き、クリスティン・クヤトゥ・ソープの観る者をイラつかせる芝居が肝となるなか、現実と妄想を行き来する、ボルグリ監督のポップな映像センスも健在。「他人の不幸は蜜の味」なブラックコメディでは終わらない妙な深みがある。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

痛烈でダークな現代社会の風刺コメディ

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

とびきりダークで辛辣な風刺コメディ。現代社会を鋭く突いてくる。かまってちゃんの主人公シグネと、ナルシストのボーイフレンドは、自分が注目されていないと我慢できない。ボーイフレンドがキャリアでブレイクすると、シグネは「そこまでやる?」と呆れることをやるのだが、嘘をつき、被害者、犠牲者になって注目を浴びる手段は、某セレブリティも使った手段。同じくノルウェーの「わたしは最悪。」も決して褒められない女性をコミカルかつ共感できる形で描いたが、シグネのほうがずっと最悪。今作が成功したのは、そんな彼女に体当たりで挑んだクリスティン・クヤトゥ・ソープのおかげが大きい。今後の活躍に注目したい女優だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

ほぼボディホラーと化した承認欲求モンスターの大暴走!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 芸術家の彼氏が脚光を浴びたことで、嫉妬心と焦燥感を募らせる女性。私も注目されたい!評価されたい!有名になりたい!はじめは仮病を使って周囲の同情を引くも、それに飽き足らなくなった彼女は、副作用の激しい違法薬物を大量摂取。赤い湿疹はたちまちケロイド化して容姿は醜く豹変、嘔吐や吐血を繰り返して日常生活に支障をきたすも、おかげで「悲劇のヒロイン」として世間やマスコミの話題となり、死への恐怖よりも自己顕示欲を満たされる快感が勝ってしまう。まさしく承認欲求モンスターの大暴走。ほとんどボディホラーへと発展するストーリーにゾッとするが、なによりも恐ろしいのは主人公の心理にどこか共感できてしまう点だろう。

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平沢 薫

悲痛さと笑いのバランスが絶妙

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 監督・脚本のクリストファー・ボルグリの新作『ドリーム・シナリオ(原題)』が、先頃予告編が公開され、ニコラス・ケイジ扮する主人公が彼と無関係な多数の人々の夢に登場するという異色の設定と、アリ・アスター監督によるプロデュースも話題のあの映画だと聞くと、見ないわけにはいかない。

 "注目される快感"のため行動をエスカレートさせていくヒロインの物語は、現在のネット社会のメタファーでもある。その見る角度によっては悲惨で深刻なドラマが、主人公の身勝手な妄想の数々や、主人公の隣にさらに自己中な恋人がいるせいで、苦笑してしまいそうな状況にも見えるところが、この監督の持ち味か。悲痛さと笑いの配合が絶妙。

この短評にはネタバレを含んでいます
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