星つなぎのエリオ (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.7
優しいトーンを持つ、夢と共感あふれる物語
両親を亡くし、友達もおらず、「こんな地球から出ていきたい」と本気で願う孤独な少年エリオ。必ずしも同じ状況でなかったにしろ、若い頃そういう気持ちになったことがある人は少なくないのでは。そしてエリオの場合、本当に地球の外に出て、エイリアンの住むクールな世界に入っていけるのだ。それは子供にとって最高の夢。でも、素敵なものは、実はすぐ近くにもあったのである。テーマは普遍的でシンプル、優しいトーンは「E.T.」などスピルバーグ映画の影響も感じさせる。個性さまざまなエイリアンや彼らの住む“コミュニバース”のデザインは実にクリエイティブかつカラフルで、ピクサーのアーティストたちの想像力にまたもや感心。
ぷにぷに触感のエイリアンたちがいっぱい
地球の外にある世界が、色も形も甘いお菓子のように柔らかく、内側からの光によって微かに発光している。異星の生命体の形はみな曲線的で、尖ったところや硬いところがまるでなく、弾力のあるぷにぷにの手触り。そして、どのエイリアンにも悪意がない。主人公と一緒にそういう世界を体験できる。
イベントはかなり盛りだくさん。ここではない場所に行きたい少年と、友だちのいないエイリアンの少年が、友人になる。少年と叔母が付き合い方を見つける。エイリアンの親が、息子の自分とは違う価値観を認める。世界中のマニアたちが力を合わせる。周囲から浮いていたオタク男子が技能を発揮する。どこかに自分に似た存在がいる。
テーマとしては安定だが、ムードや細部にチャレンジ精神が宿る
人間の少年とエイリアンの交流は、ディズニー直近の『リロ&スティッチ』と似て、ちょい不利か…と思ったら、こちらはSF映画のムードがあちこちに漂い、ピクサー作としても斬新で満足。冒頭から、どこか大人の映画っぽい落ち着いた演出も意識されたせいか、その後に大量に登場する、多様なワチャワチャしたキャラも全体的にクールに見えてくる。主人公と絆を育むグロードンを、違和感から可愛さにゆっくり印象を変換していくのは、ピクサー伝統の神業だろう。
全体としてはファミリームービーらしい普遍的テーマが貫かれているし、映像のカラフルさ、ビジュアルの壮大さで観る人を選ばず、そこにマニアックなネタを適度に配分した巧い作り。





















