ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー (2023):映画短評
ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー (2023)『TAR/ター』と関連する補助線としても捉えたい
数多いファッション系ドキュメンタリーの中でも名声の光と影を描いたものとして、同時代を生きた英国・労働者階級出身のデザイナー、A・マックイーンを追った『マックイーン:モードの反逆児』(18年)と重なる。本作の核は2011年、ガリアーノが放った差別発言による大炎上だが、その裏には心身の激しい疲弊があった。
キャンセルカルチャーにまつわる問題のひとつに、政治的無知をどう扱うかとのアポリアがある。かつて天才は浮き世離れした無邪気なキャラでOKだったが、今は「知らないでは済まされない」世の中になった。そんな風潮の中で規格外の才能はいかに受容/保護されるべきか。社会派のK・マクドナルド監督らしい視座だ。
この短評にはネタバレを含んでいます