サンダーボルツ* (2025):映画短評
ライター5人の平均評価: 3.8
マーベル、盛り返す
ここのところ冴えなかったマーベルが、新たな方向に舵取りするこの映画で盛り返した。アンチヒーローが集まるというコンセプトはとくに新しくないものの、キャラクター重視で、自然に応援できる。そこは「素敵な相棒 〜フランクじいさんとロボットヘルパー〜」のジェイク・シュライアー監督らしい。どんな映画もレベルアップするフローレンス・ピューは、ここでも映画の感情面をリアルにする上で大いに貢献。ボブを演じるルイス・プルマン(ビル・プルマンの息子)もとても良いし、デビッド・ハーバーはユーモアをプラス。傑作とまでは言えないが、娯楽性豊かで、軌道修正としては成功。ここからMCUがどう展開していくか、希望を感じさせる。
“虚無”とバトれ! MCUのやさぐれ新味
MCUではしばしば、主人公たちが内面の悪と格闘するが、その“内面の悪”を最大のヴィランに設定したのは初めてだ。
なにしろ主人公たちはヒーローというにはやさぐれており、自身の活動に対してやる気が持てずにいる。彼らの内面にあるのは圧倒的な虚無感だ。これが主人公たちを最後まで苦しめるのだが、クライマックスでのその表現はスリリングかつ恐怖に満ちており、観ているこちらも闇に飲み込まれそうになる。
キャラだけ見ればMCU版スーサイド・スクワッドともいえるが、当然こちらの方がシリアス。とはいえユーモアも生きて、ヘビーな場面にも息の抜きどころがある。非マルチバース展開ゆえの飲み込みやすさも〇。
ここ数年のマーベル映画で最もストレートに“伝わり”心躍った
「ならず者」チームの活躍はDCが先行していたが、こちらは、そこまでヴィランというわけではなく、各キャラの共感しやすさ、愛おしさが上回り、絆が構築されるプロセスもきっちり描かれるのでドラマとして上級。その分、会話シーンも多いのだが、感情の流れを理解するうえで映画的に正解か。
さらに感心したのはアクションの見せ方。基本的に肉弾戦を前面に出しつつ、動きに説得力が満点。近年の同種作品のようにCGや編集でごまかさず、つまり気を衒わない演出が、観ているこちらのアドレナリンを自然に上げる。C・ノーランかと思わせるタッチも効果的で、監督、うまい!
ラストの鮮やかさ、微笑ましさも含め、近年のMCUで最も高評価。
思った以上にド直球でMCU新作に直結
ド直球に今後のMCUの新作群に直結するので、MCUファンは必見。それを度外視しても、これまではサブキャラだった面々の別の顔が描かれて、彼らのこれまでを知っていても知らなくても、全員が愛おしくなること間違いなし。本作を見た後は、きっと彼らの見方が違ってくる。
人気ドラマ「BEEF/ビーフ ~逆上~」のジェイク・シュライアー監督は、多めの笑いと泣きの配置が手練れ。それに加えて、感情の高まりが見せ場のシーンにも、きっちりビジュアル映えする派手なアクションを盛り込んできて、その演出ぶりで唸らせる。怒涛のアクションが、いちいち決めポーズ付きなのも、この頃では新鮮で気持ちいい。
しっかりと遊んでいる
同じユニバースの中でも前作の『キャプテン・アメリカBNW』と次作の『ファンタスティック4』は王道を歩まなければならない中でMCU作品としては久しぶりに遊べる作品が登場しました。期待通り、程よく外しとスカシを絡めて楽しいアクション映画に仕上がっていました。キャラクターについてはドラマシリーズまで追いかけていないと分からないというマニアックさがちょっとハンデかもしれませんが、あまり考え過ぎずに見るのが正解と言えるでしょう。個性派キャストが並びましたが中でもフローレンス・ピューとセバスチャン・スタンが印象的でした。






















