ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング (2025):映画短評
ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング (2025)
ライター7人の平均評価: 3.9
どーした? トム&マッカリー!
これは「最低」作だ。とはいえ、クリストファー・マッカリーが担当したシリーズ3作品と比べての。トム・クルーズへの畏敬の念は変わらない。だが何かが大きくズレてしまった。当シリーズのハッタリと活劇性を合致させた“コアな部分”が。『〜デッドレコニング』(23)で膨らんだ期待は肩透かしに……強引な過去作との関連付けとか『踊る』シリーズか!?
今回に始まったことではないけれども、トムを前へ前へと持ってきて、「世界の崩壊」に抗うというヒーロー性、その使命感を背負わせた作劇がかなり空転していた。007の亜流というかジェネリックっぽい。それと2時間50分の中の、物語要素の配分も悪い。音楽の付け方も……残念だ。
2025年のマンパワー
“AI対人間”。前作『デッドレコニング PART ONE』から続く物語の主題=ミッション。これは映画作りそのものの比喩と言って構わないだろう。2023年7月の全米映画俳優組合のストライキを挟んで撮られた本作。トム・クルーズは自分が信じる映画を未曾有の危機から守るため、またも命がけで肉体を酷使する。
登場する米大統領がカマラ・ハリス風なのも興味深い。尤も“アクションの見せ場をつなぐ”ための作劇と化したストーリーテリングには問題も多く、説明事項の多い前半は停滞感を覚えるのも事実。だが同じ62年生まれである『サブスタンス』のデミ・ムーアと並んで、生身の俳優が臨界点を目指した記録としてやはり重要だ。
シリーズをつなげたウルトラC的集大成
前作が前編で本作が後編というのはシリーズのファンなら予想できるところ。しかしイーサンの、というかトムのやることは予想できないし、今回も空中や水中で緊張感みなぎるスタントを見せる。
イーサンの人工知能とのバトルは続いており、そういう意味では前作を観ておくに越したことはないが、なにしろトムがいうところの“最強のホップコーンムービー”。流れに身を任すだけでも十分に楽しめる。
シリーズの初期はそれぞれが独立した作品だったが、そのすべてをつないでみせた本作は、まさに集大成。3作目の謎のアイテム、ラビットフットの正体がここで明かされるとは思ってもみなかった。マッカーリー監督に感謝。
“あの男”の雪辱戦!
約30年続いたシリーズ・ラストを飾るに相応しい、かなり強引ながらもファンサといえる過去作とのリンク。何より、シリーズを象徴する1作目の“あのシーン”でやらかしたことにより、アラスカに左遷させられたCIA職員ウィリアム・ダンローの雪辱戦である。チームプレイという意味で『ワイスピ』シリーズに多大な影響を与えながら、妙に漂う『ワイスピ』感。さらに、よく分からん因縁を持つ宿敵・ガブリエルとの決着のつけ方に驚きを隠せなかったりする。とはいえ、陸・海・空を駆け抜ける身体張りまくりのアクションも含め、前作『デッドレコニング PART ONE』より断然楽しめる仕上がりになっている。
トムの髪の毛が信じがたい風圧で…本当に飛んでることを証明!?
日本語で「それ」と訳されるエンティティが、人類滅亡の引き金となる実態が、シリーズの過去映像の巧みなフラッシュも効果的に冒頭からよくわかる。ただセリフも多めで、説明的ムードが濃いのは否めない。
アクションに関しては、やはり上空での複葉機の翼上シーンが予想以上にたっぷりで大画面での興奮は確定的。「ここは合成か?」とツッコミを入れつつ、トムの髪が異例の「直毛」と化してて強風を実感させる。潜水も含め、過去のシリーズより見せ場アクションが「様式的美学」になったのが気になる分、逆にパンイチでのトムの肉体格闘が映えたりも。「トップガン」甦る瞬間には笑。
核保有国の多さも伝え、世界への警鐘にもなってる。
トム・クルーズが全力疾走を続ける
トム・クルーズがこのシリーズで志向するのは、映画の伝統的アクション様式を継承し、そこで出来ることを極限まで推し進めることなのではないか。シリーズ第1作公開の1996年から現在に至る長い年月の中で、映画のアクション表現は、スタントの身体性に沿う様式や、映像の編集技巧で見せる様式が注目されることもあったが、このシリーズのアクションは、舞台をその時代を象徴する建造物や土地に変えながら、様式はずっと継承され貫かれてきたことを痛感。今回もトム・クルーズが全力疾走する。
楽しいサプライズは、シリーズ過去作との意外なリンクの数々。この演出が、シリーズを原点回帰させつつ見事に総括する。
見せ場×見せ場×見せ場
今回タイトルが変わり独立した映画としていますが前作とは密接に物語が繋がっていますので、前作の復習はしておいた方がいいでしょう、さらに集大成的な作品でもあるので過去作全てを見てしまうのも良いかも。とは言え、今作はとにかくありとあらゆる”種”を撒ききった状態で映画が始まるので、冒頭からフルスロットル、ひたすら見せ場見せ場の連続でした。ほとんど見せ場だけでできてる映画と言っていいハイテンションで密度の濃い作品になっていました。シリーズ最長の上映時間ではありますが、一気に駆け抜けます。お話としては引っかかる所も無くはないのですが力業で突破していきます。本当にトム・クルーズには頭が下がりますね。