フロントライン (2025):映画短評
フロントライン (2025)
ライター3人の平均評価: 4
未曾有の危機に立ち向かった記録として必見
記録として後世に残す。その意味で重要な一作。
明らかにマスク不可欠なシチュエーションで、俳優の渾身演技を伝えるためマスクなしは映画として正しい選択。一方でDMATチームの冷静さ、妙に穏やかなムードは“非・映画的”だがリアルかと。
隔離必須の状況のため、どうしても閉塞した個別のドラマとなり、説明会話で進むシーンも多いのは仕方なく、映画的ダイナミズムは必然的に希薄になる。乗客のパニック感や恐怖、船外の一般市民の味わったことのない不安の描写が限定的ゆえ、切迫感は少なめ。当時のニュースを見守った側として、メディアへの皮肉も、もっと強く刺してほしかった。
ただ繰り返すが、未曾有災害の「記憶」として必見。
未知の脅威に直面したとき、何に従い行動するべきか?
ダイヤモンド・プリンセス号の寄港ニュースは今も記憶に生々しいし、あのときの報道や、SNS上での騒乱も覚えている。それだけに描かれたドラマには凄みがある。
パンデミックが広がる客船の対応に当たる者や、そこに乗り込んだ医療スタッフたちの群像。目の前の命を救うことと、感染拡大の阻止を天秤にかけながらの対応はスリリングだ。何より、この時点で新型コロナウイルスが未知のものであり、対応マニュアルがなかったことを忘れてはいけない。自身の命さえどうなるかわからない状況下で体を張った彼らの奔走に胸が熱くなる。
報道の在り方や偏見・差別も視野に入れた逸品。俳優たちの個性もそれぞれに印象に残る。
見られるべき力作
このテーマをこのキャストで正面から逃げずに描き切ればそれは間違いなく力作であろうことはわかっていましたが忘れられない映画となりました。あの日、あの時のことは誰もが忘れようとしても忘れられない事柄でしょう。時にその追体験はつらいものになる人がいることも確かですので、絶対に何が何でも見てくれとは言えない部分もあるのですが、やはりできるだけ多くの人に見られるべき一作であることは確かです。メインの四人は今さら言うまでもないのですが、特に窪塚洋介が最高でした、また短い出番ですが滝藤賢一も素敵でした。作劇上キャラクターの性格をはっきりさせ過ぎの感もありますが許容範囲でしょう。