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Four Daughters フォー・ドーターズ (2023):映画短評

2025年3月14日公開 107分

Four Daughters フォー・ドーターズ
(C) 2023, TANIT FILMS, CINETELEFILMS, TWENTY TWENTY VISION, RED SEA FILM FESTIVAL FOUNDATION, ZDF, JOUR2FETE

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

森 直人

フィクショナルな要素を重ねてチュニジアの混沌を抉り出す衝撃作

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

「過去を生き直すことになる。傷口がまた開く」――まず連想したのは『アクト・オブ・キリング』だ。4人姉妹のうち長女と次女がISISに加入してしまった一家を捉えたドキュメンタリーだが、事実の再現ドラマを本人達に演じさせ、不在の者をサポートの俳優で疑似的に埋めるメタ構造を持つ。演じる事を通したセルフ追体験という際どい切開法で家族の内実や深層を露出させていく。

ファミリー内の世代の分断は『聖なるイチジクの種』にも似ているが、ベン・アリー政権からジャスミン革命を経たチュニジア独特の政治的事情が娘2人の母親への反抗の形に強く影響しており、現代のアラブ社会に起こった混乱の一端を紐解いてくれる映画でもある。

この短評にはネタバレを含んでいます
大山くまお

自分たちとも深く関係のある家族の物語

大山くまお 評価: ★★★★★ ★★★★★

家族を捨ててイスラム過激派組織に加わった10代の姉妹。残された母親と妹たちにプロの俳優を加えて、家族の歴史を演じさせるというドキュメンタリー。チュニジアの政治、宗教、性的虐待などが複雑に絡む中、これまで過去を断ち切ろうとしていた家族たちは、真実と虚構を行き来しつつ、自分の過去を見つめ、家族の関係を見直し、とても普遍的な結論へとたどり着く。これは遠いアフリカの国の話ではなく、日本で暮らす自分たちとも深く関係のある話である。残酷な話だが、希望もある。家父長制に疑問を持つ人、男性からの抑圧に悩まされている人、親からの強い干渉に悩まされている人、思春期の頃にとにかく混乱してしまった人に見てもらいたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

ユニークな手法で展開する感情的で衝撃的な傑作

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 俳優を使った再現シーンを入れながら展開するドキュメンタリー。安っぽいワイドショーの再現ドラマみたいになるのかと思いきやまるでそうではない。それぞれのシーンを演じる前後の本人たちの反応を見せることで、真実、感情がより伝わってくるのだ。4人姉妹のうち、なぜ下ふたりは本人たちなのに、上ふたりは女優なのか。そこが判明する後半から映画は大きく変わり、非常にダークになるが、そこまでにも豊かではない女性たちが置かれた状況のリアルがことごとく語られていく。女性たちの不幸の連鎖を見る一方、そこには揺るがない母娘、姉妹の愛もある。若い世代への希望も感じさせる、衝撃的で胸を打つ傑作。

この短評にはネタバレを含んでいます
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