ADVERTISEMENT
どなたでもご覧になれます

We Live in Time この時を生きて (2024):映画短評

We Live in Time この時を生きて (2024)

2025年6月6日公開 108分

We Live in Time この時を生きて
(C) 2024 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.4

大山くまお

最後に悲しい別れがあってもけっして不幸じゃない

大山くまお 評価: ★★★★★ ★★★★★

人生は悲喜劇の繰り返し。交通事故に遭ったと思ったら、幸せな出会いが待っていたように、つらい出来事の直後に楽しい出来事があり、楽しい出来事の後に悲しい出来事がある。幸せが大きいほど別れの悲しさも大きくなるけど、最後に悲しい別れがあったからといって、その人の人生がトータルで不幸というわけではない。むしろ豊かな人生だったりするのだ。そんなことをこの映画は教えてくれる。フローレンス・ピューもアンドリュー・ガーフィールドも素晴らしかったし、監督の手つきも本当にいい。時制はシャッフルされているけど難しさはゼロ。泣けて仕方ないのだけれど、いわゆる難病もののの「泣ける」とはちょっと違う。傑作。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

シンプルで爽やかな人生の幸福論

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

「余命もの」という揶揄的な色を含む言葉があるが、実のところ人は誰もが自分の余命を生きている。本作では試練に直面したF・ピューとA・ガーフィールド演じる二人の物語が3つのタイムラインで構成され、交錯していく。これはノーランの『ダンケルク』等に近いアプローチとも言えよう。タイトル通り「時間」と我々の「生」の体感を主題とした映画だ。

記憶のモンタージュとして編まれた本作の時間は、デジタルな時の刻み方とは感じ方が違う。「どう生きるか」を真摯に考え、時間の体感=幸福の密度を上げようという選択を主人公は下すのだ。人生を素敵に充実させる“私たち”の姿は輝きにあふれ、こちらは心の奥底から涙が込み上げてくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

全てを物語る秀逸な原題

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

余命宣告された気鋭のシェフとその家族の物語だ。となると日本では病といかに闘ったか?に焦点を当て、”泣ける”装置として利用しがちだが、本作は違う。限られた時間の中で、ぶつかり合いながらも懸命に生き、愛を育んだ瞬間を、シャッフルしながら綴った家族の”記録”とでも呼ぼうか。ドキュメンタリーかと見紛うほどリアルさを持って響くのは、計算されつくした美術・衣装・音楽、そして編集の力もあるが、やはり、最期まで自分らしく生きることを諦めないアルムートを全力投球で演じたフローレンス・ビューの演技に尽きる。代表作に『ミッドサマー』を持つ彼女。やはり只者じゃない。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

最愛の思い出は、こんな風に心によみがえるのかもしれない

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

時制をシャッフルする作品は過去にもあったが、本作の時間の行き来はかなり自由&高度。なので最初は少し混乱し、戸惑うかもしれない。しかし「感覚」で時間がつながってることがわかると、ゆっくり心地良さが上回ってくるから不思議! そんなムードに浸っているうち、描かれるのは悲劇なのに、幸せと温かさで肉体と心が満たされる一作。
フローレンス・ピューの全身表現力、アンドリュー・ガーフィールドの繊細サポート力と、それぞれの持ち味が生かされたのは、出会って間もなくのラブシーンと、物語でもポイントとなる出産シーン。特に後者の臨場感、生々しさは凄まじいレベルで、ひとつの命の重要さが作品の核となる瞬間を目撃することに。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

時間の行き来が人生と愛のリアルをより豊かに見せる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

愛も、人生も、複雑で予測がつかないもの。時間を行き来しながら語ることで、それを効果的かつ豊かに見せていく。この展開の仕方に多少混乱する観客もいるかもしれないが、決してギミックではない。大切な人との歴史を振り返る時、思い出はランダムに浮かんでくるものだし、「あの時はこう思っていたはずなのに結局こうなった」というのは、実際よくある。それに、片方が癌を患うカップルの話を時系列で語ったらどんどん暗くなるが、こうすることで全体にエネルギーが出た。ロマコメっぽい出会い、メロドラマっぽい筋書き、笑いと涙。しかしふたりの間には現実的で共感できる会話が多数。主演のふたりはどんなに褒めても褒めきれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

愛し合う者たちの“時間”を丸裸にする

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ざっくりとストーリーを追うと難病モノと思われるかもだが、あざとさは皆無。むしろ“生きてやる!”的な意欲が強く、限りある“時間”の美しさをユーモアとともに伝えている。

 過去と現在を行ったり来たりする物語は、説明がないながらも飲み込みやすく、主人公ふたりの体験のつながりをうまく説明している。過去も現在も、さらにいえば未来もつながっている。この構成の妙は脚本の手柄。

 主演のふたりは心も体も文字通り丸裸にしての熱演。料理や散髪、子育てなどの何気ない日常のシーンも生き、地に足のついた人間の物語となった。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

もしも"時間"がこのようにあるとしたら

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 時間が、一方向に流れるものではなく、すべての瞬間が、今いる場所から等距離にあり、同等の鮮明さと、同等の重みを持っているとしたら。本作は、2人の男女の出会いから、彼らの意思によるものではない不可避な別れまで、2人が体験した時間をそのような形で描き出す。もしも時間がそのようにあるとしたら、大切なのはエンディングではなく、その瞬間それぞれの美しさなのではないか。『BOY A』『ブルックリン』のジョン・クローリー監督が、日々の生活の中の輝きを描き出しながら、そう問いかける。

 全編ほぼ2人芝居。フローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドがそれぞれ的役を演じ、演技の巧さで見飽きさせない。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT