MaXXXine マキシーン (2024):映画短評
ライター5人の平均評価: 3.8
人気ホラー3部作の最終章はジャッロだ!
タイ・ウェスト監督作『X エックス』トリロジーの最終章。舞台は’85年のロサンゼルス、ポルノ女優として成功したマキシーンは、満を持してハリウッド映画への転身を図るものの、そんな彼女に連続殺人鬼の魔手が忍び寄る。デ・パルマにアルジェントにヒッチコックにと今回もジャンル・クラシックへの目くばせが満載だが、中でもジャッロ映画からの影響はかなり濃厚。と同時に、暴力的で冷酷非情な男社会にあって、どんな手を使ってでも勝ち抜いて夢を掴もうとするヒロインを通じ、女性をエンパワメントするフェミニズム映画としても説得力がある。猥雑で治安の悪い危険地帯だった頃のロスを再現したウェスト監督の手腕も相変わらず見事だ。
映画、フェーム、ゴスがつなぐ三部作が見事完結
70年代のインディーズ映画の現場(『X エックス』)、映画の世界から遠く離れた1918年の田舎(『パール』)を経て、三部作の完結編でミア・ゴス演じる主人公はついにハリウッドへ。時代や土地柄、ビジュアルの雰囲気がまるで違うこの3作をつなぐのは、映画、名声というテーマと、ゴス。タイ・ウエスト監督はそれぞれ独立した映画として作ったというが、3作全部見てこそキャラクターのジャーニーとゴスの度胸、実力が理解できる。このジャンルは軽視されがちながら、ゴスは今、この世代で最も面白い女優のひとりだと断言。個人的には80年代のハリウッドという舞台設定にも魅了された。実際にハリウッドで撮影したことにも拍手。
野心的であり小粋でもある
新感覚スラッシャー3部作の完結編。1作目の『Xエックス』は仕掛け勝負な部分がちょっと目につき過ぎた感がありましたが、2作目『Pearlパール』で大きく世界観が拡がり一気に楽しいシリーズとなりました。完結篇となる本作では”MIAGOTHisMAXXXINE”という表記の通りシリーズと主演のミア・ゴスが完全に一体化。そんなヒロイン=マキシーンが80年代のハリウッドでのし上がっていく様を映画製作の内幕ものとして描いています。一方で実際に起きたナイトストーカー事件も絡めるなど虚実ない交ぜとなり飽きさせません。あのベイツモーテルが登場したりと小粋且つ野心的な一本でした。
ド直球の"1985年のハリウッド"が楽しい
『X エックス』が1979年のテキサス、『Pearl パール』が1918年のテキサス、『MaXXXine マキシーン』が1985年のハリウッド。時代/舞台を移し、"その時代に映画は人々にとってどういうものだったのか"を"その時代の映画のタッチ"で描く、という三部作のコンセプトが明確化。ヒロインが、映画と現実の間の境界線を見失いそうになるシーンがあるのも共通だ。
本作の1985年のハリウッドは、髪型や音楽、ビデオショップやシリアルキラーの実話などのアイテムから、男女ペアの刑事などのドラマ作りまで、ド直球の時代色がたっぷり。キャストが豪華で、この人気俳優がこんな役を?というサプライズも楽しい。
終盤やや甘いも、マニアックな味と正統派の怖さの快感に酔う
舞台が1980年代ハリウッドで、その時代のムードが匂い立ってくる映像に陶酔。同時に、70〜80年代あたりのブライアン・デ・パルマ映画に似た状況&演出を発見できたり、オタクな欲求も満たす。ケヴィン・ベーコンの『13日の金曜日』オマージュには笑い泣き!
そんなマニアな味を感じなくても、映画バックステージもの&狂気スリラーを素直に満喫できる。
ショービズ世界では“怪物”と呼ばれるくらいでないと…というテーマが全編に充満し、肥大化する主人公の野心は、この先どこまで持ち堪えられるか。これで3部作完結とはいえ、後に予感させるドロドロ運命を観たくて仕方ない。
ミア・ゴスは3部作で最も冷静な演技をみせていた。
























