急に具合が悪くなる (2026):映画短評
ライター3人の平均評価: 4.3
現代社会の厳しさを見据えつつ、より優しい未来へ希望をつなぐ
介護施設のディレクターとして日々忙殺されるフランス人女性と、癌で余命いくばくもない舞台演出家の日本人女性。偶然パリで知り合い意気投合した2人が、とめどもない会話を重ねながらお互いに友情と理解を深め合う。現代人が抱える生きづらさと資本主義の密接な関係を紐解きながら考察されるのは、果たして我々の社会は人間を魂のある生き物として扱っているのか?という問い。どちらも理想と現実の狭間で悩み苦しむ女性たちは、この温かでユーモラスで示唆と機知に富んだ豊かな会話を通じて、より優しい未来へつなげるべく不可能を可能とするにはどうするべきなのかを模索していく。見る者をそっと静かに、しかし力強く鼓舞する作品だ。
小さな声が世界を組み替える可能性を示す
大きな感銘を受けた。これまでの濱口竜介の映画が全部積み上がった“その先“に全く新しい映画が開けていく。原作の往復書簡が宿していた魂が、固有の視座からバトンリレーされる圧巻の3時間強だ。
特にパリ13区の劇場からセーヌ川沿いを歩き、施設の部屋で語り合う真理とマリー=ルーの“決定的な一日”の夜が白眉。資本主義システムの末期症状、都市と外部、身体と自然、階層と民主主義と戦争の相関……知性と経験の総てをかけて本気で交わされる長い対話は、我々が置かれている世界の構造を鮮やかに照射する。介護施設と演劇、異なる現場を生きる二人の声に、同じ“ディレクター”である濱口自身の肉声が重なって聴こえてくるようだ。
独自のリズムで生きていることと芸術を語り、またも無二の多幸感
人は、残された時間をどう過ごしたいか。多くの作品で語られたテーマを3時間超の長尺で、ゆっくり解きほぐすように、人と人の慈しみ溢れる会話とともに、映画を観るこちらの心に沁みわたらせる。
日本にも通じるパリの介護施設の問題と、そこに舞台芸術が結びつくストーリーの大胆さと美しさ。見知らぬ同士に強い絆がどう育まれるか。さらに言語の独特の使用法も含め、監督らしいアプローチが息づき、作品の魂として感動を届けることに成功。
ただ「ドライブ・マイ・カー」などに比べ、中盤に明らかに「長い」と感じるシークエンスがあり、そのポリティカルな側面が全体(およびテーマ)に機能しているかは疑問。それでも体験価値のある一作。























