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愛はステロイド (2024):映画短評

2025年8月29日公開 104分

愛はステロイド
(C) 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

轟 夕起夫

DEAD OR ALIVE な、愛の副作用の行方

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

クリステン・スチュワートとケイティ・オブライアン(元ボディビルダー)が体現する米国南西部のクィアカップルにとって、歴史的な「ベルリンの壁崩壊」よりも重要なのは、試練や苦難を越えての“愛の統一”という目の前の自分事だ。

ジャンルの横断はもはや近年のスタンダードだが、この英国監督、長編2作目のローズ・グラスも堂々たるもの。が、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99)のラスト級のサプライズを用意し、全編キレッキレの三池崇史のよう(ちなみにデビュー作では三池のあの『ビジターQ』を参照)。愛の副作用を転がした映画の劇薬が目立つものの、エンディングでの正調な「縦の構図」の余韻に唸らされた。 

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

既存の概念に囚われない新たなカルト映画の爆誕!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 多様性の尊重などとはまだ無縁だった’80年代のアメリカ、保守的で息苦しい南部ニューメキシコの田舎町。アメリカ的なマチズモに支配されたこの土地で、孤独や痛みを抱えた2人の女が出会って恋に落ち、やがて自由を求めて純愛を暴走させていく。クイア版『テルマ&ルイーズ』的な犯罪バイオレンスかと思いきや、デヴィッド・リンチを彷彿とさせるシュールレアリズムやヴィム・ヴェンダース的な乾いたロマンティシズムが織り交ぜられ、ジャンルの概念に囚われない極めて個性的な作品に仕上がっている。見る人を激しく選ぶ映画であることは間違いないが、恐らくハマる人は思い切りハマるはず。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

どうしようもないシステムをぶっ壊す、狂暴な恋

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ざっくり言えばクイア版『テルマ&ルイーズ』。恋愛が描かれる分、本作の主人公である女性ふたりは観客の心の中にズンズン入り込んでくる。

 恋に落ちるのは田舎町のジム管理人とボディビルダー。たがいの存在に希望を見出す彼女たちの絆は、絶望的な暴力事件によって揺れ動く。そのてん末は、鮮血を惜しまぬバイオレンスによって緊張感を高めていく。かたやタバコ、かたやステロイドという“毒”への依存は、窮屈すぎる日常から脱却したい願望の表われか。

 クライマックスこそファンタジーだが、そこに至るまでの過程の描写はドライでリアル。男権や封建への一撃としても有効だ。強烈!

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

独自の世界観と美学が爆発し、目が離せない

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

長編デビュー作「セイント・モード/狂信」で独自の感性を見せていたローズ・グラスの才能がさらに開花。限られた登場人物、狭い空間だった前作から、今回は1989年のニューメキシコ州というアメリカーナの世界観へ。愛、執着、こじれた家族関係、欲望、憎しみ、バイオレンスが絶妙に混じり合いながら話が展開していき、目が離せない。ボディビルディングの要素がエネルギッシュかつユニークなビジュアルとエネルギーを与える中、シュールリアルさとひとさじの奇妙なユーモアを足すところは、さすがこの監督。エンディングも痛快ですばらしい。強さと脆さを兼ね合わせたクリステン・スチュワートをはじめ、キャスティングのセンスも最高。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

愛が、ねじれたまま暴走する

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 それぞれの愛が、まっすぐは育たず、どこかねじれながらものすごい勢いで成長して、予期しなかったものになっていく。その愛は、ボディビルで自分の身体を造ること、食べること、性交すること、といった肉体性を伴う。それを具現化する、クリステン・スチュワートとケイティ・オブライアンが演じる2人が、どんどん愛おしくなる。

 監督は『セイント・モード/狂信』でもねじれて行きすぎる愛を描いたローズ・グラス。共演はエド・ハリス、ジェナ・マローンとクセ者揃い。撮影は、監督が前作でも組んだベン・フォーデスマン。最初から、夜が、そんな季節ではないのに底冷えして、何かが起こりそうな不穏な気配に充ちている。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

B級精神で超A級の(ドーピング)パワー!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

時代設定は1989年(衣装秀逸!)。『セイント・モード/狂信』のR・グラス監督(90年生)は、『TITANE』のデュクルノーや『サブスタンス』のファルジャと同様にボディホラーを独自の新・異次元へと押し上げた。

基本は電撃カップルの逃避行――「運命の出会いが人生を変える」という米ニューシネマ・パターンの女性同士版。『テルマ&ルイーズ』的予感を漂わせるが、映画の肉体にステロイドをがっつり注入。クローネンバーグや塚本晋也のDNAと結合し、激しく変形した超ジャンル映画へと増強していく。異常な髪型のE・ハリスが怪演する狂った毒父親を始め、ヤバい人しかいない暴力の渦からやがて立ち上がる驚愕の光景に瞠目!

この短評にはネタバレを含んでいます
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