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タンゴの後で (2024):映画短評

2025年9月5日公開 102分

タンゴの後で
2024 (C) LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

相馬 学

アートが彼女を“レイプ”した

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 37年前、劇場で初めて『ラストタンゴ・イン・パリ』を観たとき、凄まじい虚無に圧倒された。この映画の主演女優マリア・シュナイダーが撮影時に背負った虚無に肉迫する本作。これがまた凄まじい。

 『ラストタンゴ~』を観た方なら痛々しいレイプシーンを記憶しているはず。その撮影でマリアは俳優の仕事とは呼べないことを強いられ、人としての、そして俳優としての尊厳を傷つけられる。彼女のインタビューでそれを知ってはいたが、映像で再現されるとあまりに痛々しい。

 『ラストタンゴ~』のベルトルッチ監督は言うまでもなく名匠だが、誰かの尊厳を傷つけて生まれたたアートにどんな意味が? ハラスメントの問題提起が、重い。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

今だから振り返るべきマリア・シュナイダーの実話

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 過激な性描写で世間に衝撃を与えた映画『ラスト・タンゴ・イン・パリ』で脚光を浴び、それゆえ人生を狂わされた女優マリア・シュナイダーの物語。もちろん焦点となるのは、彼女の心に生涯消えないトラウマを残したとされる「打合せなし」のレイプシーンだ。果たして、芸術のためなら人間の尊厳を踏みにじっても構わないのか?映画の性表現が自由化した’70年代。それは確かに進歩だったかもしれないが、しかし劇中の台詞にもある通り「男性による男性のための脚本ばかり」だったことも否めず。結局のところ表現の自由の名のもとに性搾取されただけの女性も多かったのではないか。彼女やリンダ・ラヴレースのケースを見ているとそう思う。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

若い俳優にトラウマ与えた瞬間。その場にいたら…と鋭く心を抉る

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

10代の女優が予告ナシで強姦ともいえるシーンを撮影される。1972年の『ラストタンゴ・イン・パリ』の現場を再現する本作は、該当シーンそのものの衝撃度はもちろん、そこに立ち会った人たちの表情が「あなたの目の前で同じことが起きたら?」と鋭く突きつける。
若さゆえの野心。自分が「餌食」になった悲哀。世間の白い目。さらに“性”のイメージから逃れられないキャリア…。M・シュナイダーという俳優がたどる痛切な運命に、否が応でも感情移入。終盤、問題の相手に対する彼女の一言は、作品全体の象徴として心に刻まれる。
マーロン・ブランドに発声や表情、仕草で、嫌味なく“寄せた”マット・ディロンに、映画ファンは感動確実。

この短評にはネタバレを含んでいます
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