ランニング・マン:映画短評
ライター5人の平均評価: 3.4
グレン・パウエル以外、とにかく歯がゆい
日本での「逃走中」ブームが続くなかでのエドガー・ライト監督によるリメイクに期待が高まるも、シュワルツェネッガーとは異なる庶民キャラがハマったグレン・パウエル以外、歯がゆい仕上がりになってしまった。出だしこそ快調だが、監督の生真面目さが前面に出てしまったぶん、『バトルランナー』における荒唐無稽さやストーカー(追手)のキャラ立ちなどが影を潜めた。AIによる動画編集など、現実に頻繁に行われていることをここでやられても、なんの刺激もなく、終盤にかけては冗長さが目立ち始める。『スコット・ビルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』のように、今後カルト化するのも難しいだろう。
時代が『バトルランナー』に追いついた!?
『バトルランナー』は面白かったが粗さもあった……とE・ライト監督は語る。なるほど、このリメイク版では理詰めの設定。
S・キングの原作の時代設定は2025年だが、そのぶん本作では未来的ではなく現代的な設定に寄せている。動画配信サイトによる告発、テレビの過剰なエンタメ発信、そして格差社会の現実。これらが濃密にブレンドされ、緊迫感をあおる。
何より“逃げる男(=ランニング・マン)”にふんしたグレン・パウェルが魅力的。肉体面の熱演はもちろん、曲がったことが嫌いで、怒りの沸点が低い人間性の体現も味。ヒロイックだった『バトルランナー』のシュワルツェネッガーとはある意味、対極にある。
エドガー・ライト監督が突っ走って痛快!
エドガー・ライト監督が、思いっきりアッパーなノリで突っ走って痛快。映像のスピード感や選曲だけでなく、物語のノリも同じ。エンドクレジットの映像のタッチが象徴するような、パンク時代にみんながやった切り貼りとコピーで作る個人雑誌のノリで、権力に向かって中指を立てて舌を出す。この映画では、ポッドキャスターも陰謀論を提唱するのではなく、権力による陰謀を暴く。そんな世界を走り回るジョークを言ってばかりの主人公に、グレン・パウエルがよく似合う。
ゲーム司会者役のコールマン・ドミンゴのトークもノリノリ。この監督の『スコット・ビルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』のマイケル・セラが演じるクセ者キャラも必見。
物語の痛快さと主演の頼もしさを堪能
あの『バトルランナー』が原作回帰路線で再映画化されるという一報を聞いた時は不安感もありました。しかし、エドガー・ライトが思った以上に大作映画の監督業に向いていたことと、目下、勢いに乗っているグレン・パウエルが主演したことで最後まで見応えがあり、テンションが途切れない一本に仕上がっていました。こういったデスゲームモノの肝は前半の絶望感とクライマックスの痛快さだと思いますが、今回はどちらも合格ラインを余裕で超えてきます。グレン・パウエルもすっかり大作の主演として頼もしい存在になってくれましたね。
エドガー・ライトは一体どこへ?
もちろん原作と1987年の映画が先にあったのだが、その後「ハンガー・ゲーム」「イカゲーム」がヒットした(最近は『The Long Walk』も)。今これを見る理由は、独自の感性を持つエドガー・ライトがどう料理するのかという好奇心。なのに、彼らしさが全然ないのだ。もはや新しくないコンセプトを、ただまじめに、お金をかけたアクションと特殊効果で語るだけ。80年代へのオマージュを中途半端に入れるなら、いっそ彼らしくそこを逆手に取るユーモアで挑めたのでは。G・パウエルには娯楽大作スターの貫禄があるものの、観客に同情してもらうべきこの役にはピンと来ない。誰も頼んでいなかった、必要のないリメイク。

























