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エディントンへようこそ (2025):映画短評

2025年12月12日公開 148分

エディントンへようこそ
(C) 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

なかざわひでゆき

このカオスは現代アメリカの縮図だ!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台はコロナ過の2020年、ニューメキシコの田舎町エディントン。未曽有のパンデミック&ロックダウンで住民の不安と疑心暗鬼が深まる中、マスク強制の賛否を巡る町長と保安官の対立を発端として地域の分断が表面化し、平和な日常が瞬く間に崩壊していく。コロナ過はあくまでもきっかけ。上手くいかない人生に日頃からストレスを抱えていた人々が、戒厳下で飛び交う荒唐無稽な陰謀論やフェイクニュースに不満の捌け口を見出し、ネットで聞きかじった言葉とにわか仕込みの知識で隙だらけの理論武装をし、正しいのは自分だけ!真実を知っているのは自分だけ!と自己を正当化するために暴走する。現代アメリカの縮図的なカオスを描いた怪作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

分断という状況を俯瞰させるA・アスターの新境地

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 前作『ボーはおそれている』から脱ホラーの動きはあったが、今回はさらに脱ジャンル映画に。そんなアリ・アスターの新作だが、意外な発見もあった。

 パンデミック初期の田舎町でSNSに揺さぶられる人々の群像。主演は前作に続いてJ・フェニックスだが、主人公というよりは群像劇の中の引っかき回し役で、共感を抱けるキャラではない。もっといえば、ここには共感を抱ける主要キャラが存在しないのだ。

 そういう意味では、ロックダウン下の人間を描きつつも、“ドラマ”を紡ぐというより、分断という“状況”を客観視させることに重きを置いた作品。アスターの新境地ともいえるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

ややとっ散らかっているが作られる価値のあった映画

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

アメリカの今に、リアルかつ大胆に迫る超ブラックな映画。パンデミックが始まった時期のニューメキシコ州の小さな街を舞台にすることで、状況がより凝縮され、極端になった。どのキャラクターも非常に興味深く、実にいろんな側面を網羅しているのだが、その野心のせいで、全体的にややとっ散らかってしまった感は否めない。笑いあり、残酷さあり、恐怖あり。初めて見た時は、終わった後「結局何についてだったのか」と思ったものの、2度目に見て、やはりこれは作られる価値のあった作品だと確信した。好感がまるで持てないキャラクターに全力投入するホアキン・フェニックスのいつもながらの役者魂にも拍手。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

コロナの時代を物語に当てはめ、衝撃描写は持ち味全開

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

コロナのパンデミックが始まった頃の、マスク着用およびマスク警察、ソーシャルディスタンスを設定に取り入れ、なおかつ同時期の黒人差別に関するBLMから、今に至るネット炎上、フェイクによる陰謀論、SNS選挙などアスター監督の「時代への目配せ」が詰め込まれ、そこは感心。ただそれらのネタが“渋滞気味”という印象で賛否は分かれるだろう。
ファンが監督に求めるショッキング描写は、前作以上にたっぷり用意されており、満腹感は味わえるはず。キャスト陣では、そこまで登場は多くないし、大仰な演技をしていないものの、オースティン・バトラーが「背後で誰かの心を操ってる」無意識のカリスマ性で、この俳優の底知れぬ魅力を実感。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

あの鬱屈した日々が大爆発

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

いよいよホラーというジャンルから離れたアリ・アスター監督作品、まだ長編4作目なんですね。今回は2020年のあの頃の鬱鬱とした日々から思いもよらない大暴走を展開させる怪作になりました。まぁ、この展開は読めないですよね。圧倒されているうちにお話が終わります。前作に続いて主演のホアキン・フェニックスは今回も安定の暴走っぷりで、物語の主軸を担ってくれています。ペドロ・パスカル、エマ・ストーンも他では見れない怪演で楽しかったですが、中でも出番は長くないもののオースティン・バトラーの胡散臭さは良かったです。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

世界のありようが生々しい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台は2020年のコロナ期だが、描かれているのは、今、他人事ではない世界の様相だ。その自覚がないまま、情報に踊らされる人間が急速度で増加していく。もはやその情報の真偽も、その主張の妥当性も関係ない。踊らされる人間たちが暴走して「いやいやそれはないでしょ」な光景が「いやあるかもなこれ」に見えてくる。

 その状況が、いつものアリ・アスター映画の超常的要素や暗喩を排除し、写実的でド直球な表現のコメディの形で描き出される。それでいて、激しくブラックな味つけと、笑いのドギツさは、いつものアリ・アスター。やはり毒家族が登場するのもこの監督流か。現在の世界の様相が、ひたすら生々しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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