これって生きてる? (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 4
実話を基にした大人向けの上質なラブストーリー
傍から見れば順風満帆。ごく平凡だが幸せな結婚生活を送っているはずの中年男が、長年連れ添ってきた妻から突然言い渡された三行半。いったい自分の何が悪かったのか?戸惑い混乱する主人公がふとしたことでスタンダップ・コメディに出会い、自分の私生活をネタに自虐的ジョークを披露したところ大受けし、しかもこれが我が身を振り返る良いきっかけとなり、やがて失いかけた妻の愛情を取り戻していく。とても上質な大人向けのラブストーリー。テレビのシットコムのイメージが強いウィル・アーネット(物語は彼の友人の実話)だが、これほど上手い役者だったとは!なんとも微笑ましくてジンワリと胸に染み入る作品だ。
コメディで知られてきたアーネットの名演技に感動
イギリス人コメディアンの経験談に想を得た、リアルな大人の物語。誰が悪いわけでもないのに、時間と共に心が離れていった夫婦の込み入った状況と感情を優しく見つめていく。これまでコメディ作品で知られてきたウィル・アーネットに、ここまで複雑で奥深い演技ができるとは!この美味しい役を友達に与え、自分は助演に回ったブラッドリー・クーパーにも拍手。逆にクーパーはしばらく見せていなかったコメディの才能を発揮する。興行面でも賞レースでもクーパーの監督作の中では最も目立たない結果となったが、小粒な人間ドラマを興味深く語れること、また役者からこれだけのものを引き出せることを証明したのだから、十分意味はあった。
クーパー流儀、等身大の大人の都市映画
NYの夜、スポットライトに照らされた男(W・アーネット)の孤独が、ふと笑いへと変わる瞬間がある。監督を務めるブラッドリー・クーパーは『アリー/スター誕生』や『マエストロ』で磨いた“表現と人生”の交差点を、この長編第3作ではより素手の温度で描き出す。崩れかけた夫婦の姿はベルイマン『ある結婚の風景』の軋みを思わせ、同時に『ラブ・アゲイン』のように人生の折り返しで再び灯る情熱の予感を孕む。
舞台に立つことがセラピーとなり、笑いが傷を縫い合わせていく。中年の危機を抱えた魂が、都市のざわめきの中で再び息を吹き返す――そんな静かな奇跡を、長回しの呼吸とこぼれるユーモアでクーパーは軽やかに掬い上げている。
























