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ジュディ 虹の彼方に (2019):映画短評

ジュディ 虹の彼方に (2019)

2020年3月6日公開 118分

ジュディ 虹の彼方に
(C) Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

村松 健太郎

シンクロする熱演

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

2000年代後半から事実上の開店休業状態だったレネー・ゼルウィガーと再起を目指す結果として最晩年となったころのジュディ・ガーランドの姿が重なる伝記物語。
この一点のシンクロの部分だけを見るだけでも一見の価値ありです。
熱演というものとも違うベクトルのハマりこんだ表現を見ることができます。
回想シーンに登場する子役時代のジュディとちらりと登場するライザ・ミネリが雰囲気が似ていますのでお見逃しなく。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

ハリウッド流に逆らって、潰された才能に涙

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

抜群の歌唱力で人気女優に上り詰めながら夭逝したジュディ・ガーランド。相当のファンでないと興味がないだろう彼女の晩年からハリウッドの恐ろしさを浮かび上がらせる業界ドラマだ。思春期の少女にダイエット(実際は覚せい剤使用)を強制し、スターダムという名の鎖でがんじがらめにする。身を持ち崩すのも当然だ。それでも業界のルールに従えば温情も得られるのだが、自身のルールを貫くジュディの壊れかけた姿をR・ゼルヴィガーがスクリーンに蘇らせた。口パクと思うほど歌声もジュディにそっくりで、賞レース独占も納得。#MeTooの今だからこそのフェミニスト映画であり、さまざまな意味を汲み取れる副題も素敵だ。

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斉藤 博昭

多くの俳優が演じてみたいであろう、レジェンドの苦闘

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

『オズの魔法使』のドロシーが、両足のかかとを鳴らして願いをかなえたこともサラリと引用されたりするので、ある程度の知識があった方が楽しめる。クスリや酒に頼るしかない姿は悲痛だが、彼女を知らない人に、スターとしての偉大さが伝わるかどうかは構成としてやや微妙か。それほどジュディ・ガーランドの栄光と苦闘は、長年の映画ファン、およびアメリカ人にとって常識的に「伝説」だと改めて認識する。
オスカー受賞のレネーは、ステージパフォーマンスは圧巻。しかし他の多くの部分は大仰さ、ぎこちなさが先行し、その苦悩、複雑な心情が奥まで突き刺さってくるとは言い難い。名演という賞賛には違和感。レジェンドに挑んだ勇気には拍手。

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なかざわひでゆき

オスカーに相応しいレネー・ゼルウィガーの大熱演

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『オズの魔法使』や『若草の頃』などのミュージカル映画に主演し、ハリウッド黄金期を代表するスターとして一時代を築きながらも、晩年はアルコール中毒や借金苦に悩まされた大女優ジュディ・ガーランド。そんな彼女が47歳という若さで亡くなる直前、ロンドンで行われたコンサートの舞台裏を描く。まさしくスターの光と影。個人の才能を文字通り商品として使い捨てにするショウビズ業界の犠牲となりながらも、最後までファンに愛されることを願い、己を表現することに全てを捧げた大女優の姿に胸を揺さぶられる。レネー・ゼルウィガーはオスカーに相応しい熱演。ただ、ハリウッドのスターシステムに関する予備知識は必要かもしれない。

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くれい響

“レインボーフラッグ”の真意も描写

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ハリウッド黄金期を代表するスターで、犠牲者でもあるジュディ最期の半年に焦点を絞っているだけに、自伝映画として観ると、『ボヘミアン・ラプソディ』ほどのカタルシスは得られない。とはいえ、レネー・ゼルウィガーの演技&パフォーマンスは文句なく、典型的な破滅タイプで自業自得なジュディを愛嬌あるカリスマへと魅せていく。ファンのゲイカップルを通し、去年の「紅白歌合戦」でMISIAが掲げた“レインボーフラッグ”の真意を描くあたりも今っぽい脚色だ。ちなみに、ジュディに振り回される世話係を演じたジェシー・バックリーは、『ワイルド・ローズ』(6月公開)で自身がどん底の歌姫を演じていたりする。

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相馬 学

スタアであることに殉じた、激情的で哀しい生

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 金に困りながらもプライドで生きている往年の名子役J・ガーランド。彼女の晩年を描いた本作で浮かび上がるのは、そんなスターの光と影だ。

 見栄っ張りで気まぐれで傲慢。スターであることを誇る人間はそのようなエゴに溺れがちだが、ジュディも例外ではない。一方で、子どもたちを愛する母親でもあるが、その愛が行動に反映されないのもプライドゆえ、か。そこに人間ドラマの妙を覚える。

 ジュディ役をゼルウィガーが演じると聞いたときは“違うんじゃないの?”と思ったが、いざ映画を見たら濃いめのメイクがハマっているばかりか、老いの枯れ具合をもしっかり匂わせる熱演。歌唱の寄せ方も含め、アカデミー賞受賞も納得。

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森 直人

スタア全身全霊

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

アカデミー主演賞繋がりではないが、このR・ゼルウィガー演じるジュディ・ガーランドを観ながら『ジョーカー』のホアキンと重なる瞬間が多々あった。疎外と孤独。濃いメイクと作り笑顔。助演オスカーのブラピとL・ダーンが共にクールな立ち位置なのに対し、主演はハードコアな魂と業を宿した2人に贈られたのは興味深い。

「アメリカの恋人」と呼ばれた女性の悲劇は『ホイットニー』等にも隣接し、スターの自分が等身大の自分を押し潰していく道の中で一縷の救いとなった愛の形はもの凄く胸に迫る。重要な役割を果たすシンボリックな“あるカップル”にも拍手。『オズの魔法使』との二本立も大丈夫――その難しい資格を有する映画だろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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