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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 (2013):映画短評

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 (2013)

2014年2月28日公開 115分

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

清水 節

移動すらままならぬ老いた父と中年息子は、荒野をめざす

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 アメリカがくたびれている。アレクサンダー・ペイン監督お得意のペーソスに飛んだ家族ドラマではあるのだが、様相が異なる。泣き笑いよりも悲哀の色が濃いのだ。
 
 モノクロのシネスコ画面の中で、父が旅へ出ようともがく。60~70年代アメリカ映画のスタイルは、なかなか作動しない。目的は幻の懸賞金。『アバウト・シュミット』の老後にはまだ活力が漲っていたが、本作の残酷な老いは、移動すらままならない。息子が手を差し延べ、ようやく景色が流れ出し、老人と中年のロード・ムービーが始まる。
 
 さびれた中西部の荒漠とした風景を彷徨う、父ブルース・ダーンの佇まいに映画史が重なる。これは生きる尊厳についての名画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

頑固じいさん子2人

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

 今年のオスカー候補は激しい人間ドラマが多いが、そういう意味で異彩を放つ本作。モノクロ映像で綴られる親子のロードムービーということで敬遠する人ももいるだろうが、オスカー常連監督の実力はタダモノじゃない。インチキ懸賞金を信じる頑固オヤジあるあるに、その金にたかろうとする田舎あるあると、これまで以上にダメ人間を温かくシニカルに描き、ガッツポーズしたくなるほど見事な着地を決めてくれる。
 アメリカン・ニューシネマへのオマージュからのブルース・ダーンやイヤミなステイシー・キーチのキャスティングも見事だが、母役のジューン・スキップがとてつもなく素晴らしい。劇中見せる彼女のトボケた表情が頭から離れない!

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

モノクロ映像がさらに侘びしさを誘う現代のアメリカ

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

『アバウト・シュミット』と『サイドウェイ』で、人間の些細な悩みを米国の雄大な景色で包み込むように描いてきたA・ペイン監督。だが、同じロードムービーでも趣が違う。
 親子の情愛を深める旅は、経済不況にあえぐ寂れた街や人を通り過ぎる。貧しさは人の心をトゲトゲしくし、久々に再会した兄弟や友人たちの言葉は険があって笑うことすらはばかれる感じだ。しかし、これがペイン監督の目を通して見た今の米国そのものであり、優れた監督が持つ゛作家性゛というものだろう。
 ただ物語は、D・リンチ監督『ストレイト・ストーリー』とカブる。ブルース・ダーンの味、様様である。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

高齢の親を持つ世代なら尚更のこと心に染みる作品

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 人間は年を取ると丸くなると言われるが、実際はそうでもない。怒りっぽくなったり、せっかちになったり、我が強くなったり。しかし、自分が老い先短いと悟った時にやり残した事が多ければ、若い頃のように体が動かないことを思い知らされれば、不満や焦りから多少偏屈になってしまうのも仕方あるまい。それが人間というものだろう。
 本作はそんな年老いて思い込みの激しくなった父親と中年息子の一風変わった道中記。ユルい笑いとシビアな現実を織り交ぜつつ、面と向かって愛していると言えない不器用な親子の姿を暖かく見つめる。ブルース・ダーンの偏屈ジイさんぶりも微笑ましい。高齢の親を持つ世代には尚更、心に染みる映画だろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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