ライオン・キング:ムファサ (2024):映画短評
ライオン・キング:ムファサ (2024)ライター4人の平均評価: 3.8
バリー・ジェンキンス監督が自身の流儀で映画化
『ムーンライト』『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督が、この題材をどう演出するのか。その映画化のコンセプトは明確。『ムーンライト』でも色調にこだわり抜いた監督は、本作でもその流儀を貫き、サバンナの色調は現実同様、強い日差しにさらされて白っぽく、大気は熱を帯びている。現実に生じない現象は描かれず、幻想的なシーンは、氷の壁を通して見ると形が変化して見えるという具合。物語をシリアスに語るため、お笑い担当のプンバァとティモンは物語の外部にいて、お話の聞き手という立ち位置になっている。こうしたジェンキンス監督流の演出は好みが分かれるところかもしれないが、その徹底ぶりが痛快。
王の誕生は盛沢山
オーソドックスな貴種流離譚だった1作目の前日談は意図的に貴種流離譚の反対を行く物語となっていました。何者でもなかったムファサがなぜ王になったのか?そして因縁深いスカーとの出会いと対立までも手際よく描いています。悪役のキロスがわかりやすく憎々しかったり、ミュージカル要素もあったりと見ていて飽きるところがなく最後まで楽しく見ることができました。吹替版キャストもなかなか良いキャスティングだと思います。実写洋画が苦戦した2024年ですが今作は最後の盛り上げ役となってくれることを期待します。
別世界に連れて行ってくれる美しい映像
最高のテクノロジーを駆使したビジュアルは、期待した通りとても美しく、すぐさま別世界に連れて行ってくれる。ぜひ、IMAXの3Dで堪能すべき。だが、ストーリーは、いろいろ起こるわりに、ややドラマ性に欠ける。ムファサとスカーのオリジンストーリーとあり、結局このふたり(2匹というべきか)がどうなるのか知っているので、そこはある程度しかたがないのだが。しかたがないと言えば、せっかくバリー・ジェンキンスを起用したのに、彼らしさもほとんど感じられない。音楽はどれも良いが、エルトン・ジョンとティム・ライスによる「ライオン・キング」の名曲のような、いつまでも心に残るものは残念ながらない。
現代ミュージカル最高峰の仕事に感動
一にも二にも音楽のパワー、美しさ、ドラマ性で魅せる一作に。リン=マニュエル・ミランダの送り出す楽曲は、それぞれのシーンに鮮やかに溶け込み、特に兄弟の絆を奏でるナンバーの躍動感、敵役キャラの挑発的メロディなどいくつも耳に残る。
崖や大河、雪山などでのアドベンチャーは絵的にも見ごたえ満点で、おなじみのコメディ担当、プンヴァやティモンの出番もちょうどいいバランス感。『ムーンライト』バリー・ジェンキンス監督という面では、「カインとアベル」のような脈々と続く兄弟神話を重ねたくなるが、そこまで彼の作家性は感じられないかも。あとライオンのキャラ多数で見分けがつきにくいが、次第にそこはどうでもよくなっていく。