バレリーナ:The World of John Wick (2025):映画短評
ライター8人の平均評価: 3.4
リッチな画面と殺人DIY精神は本家そのまま!
グググッと広がった「ジョン・ウィック」シリーズを、アナ・デ・アルマス扮する女殺し屋を主人公にもう一度コンパクトに見せてくれるのが本作。本編とのつながりは濃いが、あえてシンプルなストーリーにすることで新規参入のハードルを低くしている。それでもゴージャスでリッチな画面とノンストップのアクション、目の前のもの全てを凶器にする殺人DIY精神は本家そのまま。カフェの店員やカップルが次々と襲ってくる殺人村の設定は面白いが、強さと残虐性があまり描かれていないため、主人公の悲壮感があまり出ていなかったのが残念。ガラスの中のバレリーナ人形に象徴される“逃れられない運命”もバレリーナの強さの前に霞んでいた。
新たなる女殺し屋伝説の誕生
『ジョン・ウィック』シリーズと世界観を共有するスピンオフ映画。ジョンと同じく犯罪組織ルスカ・ロマに育てられたバレリーナ兼殺し屋のイヴが、幼い頃に自分の親を殺した謎の暗殺カルト教団への復讐に挑む。どことなくヨーロピアンなダークファンタジー色が感じられるのは、『アンダーワールド』シリーズのレン・ワイズマン監督だからだろうか。全体的にストーリーは予定調和の連続だし、不完全燃焼なネタが少なくないのも気になるが、しかし暗殺者ばかりの村を舞台にした後半の攻防戦はなかなかスリリング。フライパンからスケート靴まで駆使したバラエティ豊かな殺しのテクニックも面白く、中でも終盤の火炎放射器バトルは迫力満点だ。
レン・ワイズマン監督の職人技光る!
『ジョン・ウィック』のスピンオフ以前に、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でのアナ・デ・アルマスの活躍に不満を感じたアクション映画ファンには嬉しい一作! 独特の世界観を踏襲しながら、『ニキータ』から一大ブームとなった女殺し屋映画の醍醐味を詰め込んだのは『ダイハード4.0』、コリン・ファレル版『トータル・リコール』といったシリーズ・リメイク作で、いい仕事をした職人レン・ワイズマン監督。つまり面白さは保証付きだが、スピンオフにしてはキアヌ・リーブスの出番が多いサプライズ付き。銃撃戦のバリエーションが尽きたのか、火炎放射器バトルに突入する展開はアクション映画の未来を感じさせる。
ジョン・ウィックの後輩、鮮烈デビュー!
『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフにして、独自性の構築を目指した意欲作。ジョンが育った殺し屋要請所兼、バレエ学校出身の、若い女性暗殺者のデビュー物語を描いている。
主人公が女性となり、監督も『アンダーワールド』シリーズのレン・ワイズマンにチェンジ。その効果もあり、アクション描写のスピード感も違ってくる。最初はぎこちなかったヒロインの、バトルのアップテンポ化が物語内の成長をうかがわせて魅力を放つ。
本家と比べるとアクションの振り切れ具合は物足りないが、それでも火炎放射器バトルをはじめとする趣向を凝らした描写の面白さは買い。A・デ・アルマスの熱演にも目を奪われた。
予想以上に『ジョン・ウィック』に直結
予想以上に『ジョン・ウィック』シリーズとのリンクは直結で、ジョン・ウィック自身もかなり活躍する。銃弾の数も、格闘の回数も、本家シリーズに負けてない。主人公の好敵手は登場せず、主人公に特化。彼女の背負う哀しい宿命の切なさや、それゆえの美しさではなく、彼女のタフさとクールさを前面に出すのも『ジョン・ウィック』流か。
そのうえでアクションにはヒロインらしさを加味。小柄な体格の主人公は、指導者から、体格面で勝る相手と戦う時の極意は「ズルをすること」と教えられ、それを実践していくという趣向。それを踏まえて、彼女が銃や剣だけでなく、身近にあるアイテムを武器として使うという戦法も面白い。
強烈でユニークなアクションがノンストップ
ストイックな主人公が復讐を誓い、ノンストップのアクションを展開する「ジョン・ウィック」の世界を正しく継承したスピンオフ。ワイズマンが監督する今作もアクションはユニークかつ強烈で、考える暇を与えない(スタエルスキが相当追加撮影をしたとの報道もあるが、結果が良ければ良し)。とくにレストランでのファイトシーンは痛快。別の映画でも独特の存在感を放ってきたアナ・デ・アルマスは、今作で本格的なアクションヒロインぶりを見せつけた。打ちのめされても黙々と立ち上がるところも、リーヴスのキャラクターにつながる。メインのシリーズにつながっているが、それらの映画をよく覚えていなくてもシンプルに楽しめるのでご心配なく。
シリーズの魂を受け継ぎつつ、アクションの印象は別次元
「007」でアナ・デ・アルマスのアクションを「もっと観たい!」と募った欲求に、存分に応えてくれる。肉体技は重量級なぶつかり合いというより、一瞬で相手の関節をキメるなどテクニックとスピードを重視。特に中盤のレストランでの戦いは、さまざまな手元の“道具”を駆使した、曲芸のような楽しさがある。バレリーナとして得た才能を生かすシーンが、もうちょっと観たかった気もするが。
主人公イヴの生い立ちは悲壮だが、それ以上に複数の女性キャラの運命が狂わされ、そこが切ない。
ゲスト的かと思われたキアヌも意外にたっぷり出てくるので、本シリーズとの濃厚なリンクを実感。ホテルのフロントの彼の姿には、ちょっと胸が詰まった。
世界観が確立されているのが強み
4作品作られた”ジョン・ウィック”シリーズからのスピンオフ。2と3の間の物語ということでシリーズのお馴染みの面々が総登場してくれます。キアヌ・リーヴスが顔出しだけではない出方をしてくれるなど贅沢感があります。アナ・デ・アルマス演じるヒロインがとても魅力的で彼女のシリーズもまだまだ見たいですね。シリーズ本線との合流などもあり得るのではないかと期待してしまいます。悪役がガブリエル・バーンで、キーパーソンにノーマン・リーダス、監督がレン・ワイズマンというジャンル映画ファンを安心させる並びなのも嬉しいです。シリーズの習わしに従いちゃんとR15です。



























