THE END(ジ・エンド) (2024):映画短評
ライター2人の平均評価: 3
ティルダ・スウィントンが想いを歌い上げる
ティルダ・スウィントンやマイケル・シャノンが、歌声というよりも存在感で歌い上げるミュージカル。なぜミュージカルという形式なのか。その理由の一つは、リアリズムとは無縁の寓話的な物語だからだろう。もう一つは、人間のさまざまな感情の動きを増幅させて描くためなのではないか。
地上に人間が住めなくなって25年後。地下シェルターの豪華な部屋で暮らしてきた親子と使用人たちが、地上から来た一人の女性を発見する。世界は終末なのだが、浮かび上がるのは終末についての何かではなく、人間の集団生活によって生じる問題や、各自の感情とその対処法。終末でも変わらない人間というものが剥き出しになっていく。
地下での満ち足りた生活をミュージカルで…と「攻めた」作り
25年間、隔離された地下シェルターで生活を送る「一家」の設定で、自給自足で野菜を育てる様子も映し出されるも、基本的に何不自由ない“おしゃれな日常”が展開…ということで、ツッコミ無視で観るべき作品。スタイルがミュージカルなのも、あえてリアリティを回避した策か。突然の歌へのシフトも、その違和感をむしろ楽しむべき。斬新な体験を求める人には最適な一作かも。
驚嘆するのは、撮影を行った岩塩坑のビジュアルだ。つまり本物の地下世界が目の前に出現する。地上から空気を届けるエアチューブなど実際の設備も物語に「意味」を与える。
どんな作品でも異彩を放つT・スウィントンが、この異空間にはフィットしてるのが逆に新鮮!




















