コート・スティーリング (2025):映画短評
ライター6人の平均評価: 4
快活というアロノフスキーの新境地
こんな陽性のバイオレンスアクションをアロノフスキーが撮るとは嬉しい驚き。ガイ・リッチーがロンドンではなくNYにカメラを向けるとこうなるのでは……そんなことを考えながら楽しんだ。
何も悪いことをしていないのに暴行されて大怪我を負ったばかりか、恋人をも殺される男の復讐劇。話だけ追うと凄惨だが、そこにスクリューボールコメディ的な要素が絡み、悲惨さを笑えるほどになってしまうのが妙味。
暴力描写に痛みを伴うのがアロノフスキーらしさといえばらしさだが、アップテンポの快活さが先立った。80年代・90年代、そして今の音楽の使い分けとそれらの主張が何気に効いている。
面白くてびっくり
作家性の強い監督がジャンル的な娯楽映画を手掛けた場合、単純に“薄まる”ことが多いが、本作はアロノフスキーの味がシンプルに際立つ痛快作に仕上がった。98年のロウアー・イースト・サイドを始め、猥雑なNYを舞台にした犯罪アクション。キムズビデオの店頭も映る。その都市空間の中、重い喪失と酒の依存を抱えた、いかにもアロノフスキー的主人公である青年ハンク(オースティン・バトラー)が負の連鎖に巻き込まれていく。
R・キングやZ・クラヴィッツ、凶暴なロシアンマフィア2人組や超正統派ユダヤ教ハシド派の殺し屋兄弟など、脇のキャラも賑やかでカラフル。驚きのノンクレジット出演が用意された最後まで見どころたっぷりだ。
アッパーなアロノフスキー
ひたすら闇に堕ち込んで行く人々の姿を描き続けてきたダーレン・アロノフスキー。そんな彼がまさかこんなにテンションの高いアッパーなクライムアクションを作ってくるとは思いませんでした。こんなのも作れるんですねということを知るだけでも一見の価値があります。主演のオースティン・バトラーのハマリ具合が非常に楽しく最後まで物語を牽引してくれます。豪華且つ曲者が揃った助演陣も見事でしたが、彼らの思わぬタイミングでの退場劇もまたあっと驚かせてくれました。舞台となる90年代のニューヨークのあの一帯は監督にとってホームグラウンドだったということで”愛着”が伝わってきます。
オースティン・バトラーの身体がよく動く
オースティン・バトラーは、こういうちょっとダメ男系の役が似合うのではないか。自分の運転による交通事故でプロ野球選手になる夢を絶たれ、今は小さな酒場のバーテンダーをしているが、偶然、大金がらみの犯罪社会の騒動に巻き込まれ、あちこちでボコられながら、盗塁を試みる。身体がよく動き、フットワークの軽さで魅了する。それに呼応するエンドクレジット映像のノリがカッコイイ。
『π』から始まり『ザ・ホエール』にたどり着いたダーレン・アロノフスキー監督が、彼が『π』製作時に住んでいた90年代NYの下町を舞台に、彼が当時読んで映画化を望んだクライム小説を映画化。この監督のまた新たな挑戦としても興味深い。
猫好き必見!オースティン・バトラーの魅力も爆発
猫、野球、90年代と、個人的に魅かれる要素だらけ。悪い男たちが出てきてバイオレンスもたっぷりあるが、そんな中でも主要なキャラクターが一生懸命猫を守ってくれることにほろり。エンドクレジットも心をくすぐるので、猫好きは最後までお楽しみに。ストーリーの設定だけ聞くとガイ・リッチー映画みたいと思わせるが、さすがのアロノフスキーは自分のカラーをしっかり出した。彼のフィルモグラフィーで最も軽めで近づきやすい作品。そしてオースティン・バトラー!この数年、「エルヴィス」、「ザ・バイクライダーズ」、「デューン」などで違った側面を見せてきた彼は、間違いなくハリウッドを代表する大スター。彼が出るならなんでも観たい。
運命は悪夢的に過激だけど、バトラーの演技で快調なノリに
謎なタイトルが戸惑いを感じさせるも、意外な拾いモノ。人生で失敗を経験し、ヤバい連中の標的になり、さんざんな目に遭う主人公は映画ではよくあるパターンだし、前半こそやや展開も混乱気味で入り込みづらいが、観ているうちに作品のノリが快感にシフトする。その理由は、オースティン・バトラーが過去の作品と違うアプローチで主人公ハンクと一体化したからか。この人、周囲を翻弄する危うさで魅力を開花させたが、今回は等身大キャラに徹する。酔っ払ったシーンも楽しそうに演じ、観ているこちらも妙にホンワカ&共感。
野球ファン、猫ちゃん好きなどマニア心をくすぐる描写も物語にフィット。衝撃も多いが、観終わると痛快さが上回ってる。



























