猫を放つ (2025):映画短評
クールな表象と私小説的な濃度が共存する
冒頭で写真家のマイコ(谷口蘭)が扱うピンホールカメラ。風変わりな制作経緯をたどった志萱大輔監督の初長編は、“カメラ・オブスキュラ”という映画の遥かな原初から立ち上がる。洗練された画や音楽。アンビエントの響きがトーン&マナーを支えながら、その奥に個的などろっとした感情をじわりと滲ませる。
男性視点の強さや日常へのシュルレアリスティックな幻想の介入は、初期ホン・サンスを思わせつつ、7年前に撮られた映像を“記憶”として現在パートに編み込む構造は、時間そのものを素材として扱う大胆さに満ちている。創作と生活の狭間で揺れる若い夫妻のパートナーシップ。迷宮のように入り組んだ心の“猫的”な動性を呼び起こす。
この短評にはネタバレを含んでいます





















