OCHI! -オチ- (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.3
A24らしからぬ(?)正統派ファンタジー
A24が『ヒックとドラゴン』を、もっといえばディズニーアニメを実写でつくると、こんな風になるのだろうか?
未知の存在への恐れが理解へと変わっていくプロセスを物語の根幹に置き、カルパチア山脈の神秘的な自然を舞台に据える。オチという架空の生物の存在が信じられる、そんな描き方の妙。舞台は現代だが、おとぎ話のような世界観に魅了される。
主演のヘレナ・ツェンゲルは、はみだし者の孤独を匂わせる好演で今回も印象深い。その父にふんしたウィレム・デフォーが、ランティモス作品以来すっかり板についた、頑固と勘違いが共有するキャラでユーモアをにじませており、ニヤニヤしながら観てしまった。
お馴染みの話を美しいビジュアルで語る
暖かな色を基調にした世界観は、わずか1,000万ドルの予算で作ったと聞いて驚く美しさ。そこはすごい。しかし、ストーリー、キャラクター、メッセージは、スピルバーグや「ヒックとドラゴン」をはじめ数ある名作を思い出させ、新しさがない。ユーリと幼いオチの関係には「E.T.」のような説得力がなく、父、母との対立も共感させる奥深さに欠ける。おかげで、才能豊かなヘレナ・ツェンゲルがクライマックスで見せる涙も、今ひとつ心を揺さぶらないのだ。幼いオチのデザインがあの有名なキャラに似ているのも気を散らせる。家族で一緒に見られる娯楽ファンタジー映画の要素は満たしているけれども、もっと優れた過去の傑作はたくさんある。
山の異世界が不思議にあたたかい
山の異世界の手触りに魅了される。ルーマニアのカルパチア山脈で撮影された渓谷と森の実景と、監督自身も筆を取ったマットペインティングが、境界線なく溶け合って生み出す風景に、手作りの柔らかな質感と温もりがある。監督・脚本は、ビョークやパンダ・ベアのクリップを手がけたアイザイア・サクソン。音楽は、ダーティ・プロジェクターズのデヴィッド・ロングストレスが、この地方の民族音楽を取り入れて描き出す。
出演陣が豪華。主人公の少女役は『システム・クラッシャー』の強烈な女の子、ヘレナ・ツェンゲル。その両親役がウィレム・デフォーとエミリー・ワトソン。フィン・ウォルフハードが主人公の友人役を演じる。























