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スター・トレック イントゥ・ダークネス (2013):映画短評

スター・トレック イントゥ・ダークネス (2013)

2013年8月23日公開 132分

スター・トレック イントゥ・ダークネス
(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

今 祥枝

強力な悪役を得てなお、カークとスポックの関係性に魅力がある

今 祥枝 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作で「スター・トレック」シリーズのファンに目配せしつつ、シリーズに馴染みのなかった客層に間口を広げたJ.J.エイブラムス。非常に縛りの多い中で、今作もまた単体で楽しめると同時に従来の熱心なファンをも唸らせる仕上がりは感動的だ。

期待に違わず、ベネディクト・カンバーバッチの悪役はシャープな印象の怜悧なキャラクターにゾクゾクさせられる。スコッティほかクルーの活躍と団結する姿が痛快なのも、圧倒的な悪役の存在があってこそ。だが、全体としてみればやはりカークとスポックの関係性に魅力のある映画で、カークの成長が嬉しく、スポックが激しい感情を露にする場面では感極まった。カンバーバッチは正しくヒールの役割を果たして、J.J.作品の醍醐味である”仲間の連帯感”を十二分に引き出している。

かようにJ.J.の采配は優秀だが、才能あるクリエイターとタッグを組んでのチーム作りにも長けている。本シリーズでもテレビで組んできたアレックス・カーツマン、ロベルト・オーチーら真性オタク達の貢献度は高い。基本的に陽性の王道感が魅力のJ.J.と彼らの絶妙なバランスが、前作よりややオタク寄りだが今回も上手く機能している。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

一見さんウェルカムのエイブラムス流SF演出

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 イチゲンさんには敷居の高かった『スター・トレック』シリーズをドラマとアクションの強化によって再生し、客層の間口を拡張したJ.J.エイブラムス監督のスタンスは、この続編でも変わらない。キャラクターの行動に、丁寧に動機づけをして話を進める手腕は今回も冴える。
 カークら主要キャラは友情や葛藤、それぞれのロマンスがしっかり描かれているし、悪役でさえ同胞意識の強さをうかがわせる。それぞれ怒る、泣くといった感情があらわているから、守りたい、救いたいという気持ちも痛いほど伝わってくる。エイブラムス以前の“スタトレ”のキャラは主に“ミッションだからやる”という使命感で動くことが多かったが、エイブラムス版はそこに“情”が伴うのだ。それゆえにシリーズのファンでなくても理解できるし、また共感もできる。ベタと言われればそれまでだが、これを正面切ってやるには相当な技量が必要だ。そういう意味で、改めてエイブラムスの才腕に唸った。
 キャストで目を引くのは、やはり悪役のベネディクト・カンバーバッチ。涙を流すほどの情の脆さと不敵さが両立した、そんな悪役に説得力をあたえられる役者は、そうそういるものではない。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

主役を食ったカンバーバッチが体現する、怨念/もうひとつの正義

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 J.J.エイブラムスは、リブートの真の意味を知っている。“いちげんさん”も楽しめる間口の広さで導入し、IMAX仕様の壮大な活劇と心のドラマを大胆不敵に融合させた。しかもオタク臭を消臭しながら、ファンの心をくすぐる伝統的なネタも散りばめる。但し、艦が航行する重厚感は弱い。常に動くキャメラ、テンポの速さに加え、主役でもあるエンタープライズ号を愛おしげに見せるショットが少ないためだ。
 
 09年の第1作から独立した作りではあるが、未熟なカークの成長譚であることは通底する。今回、本能的なカークと論理のスポックは対立軸ではなく、補完し合う人間の両面性として描かれる。団結必至なほど、敵の造形が強烈だからだ。ベネディクト・カンバーバッチが主役を食った。『ダークナイト』の無慈悲な憎悪の化身ヒース・レジャーをも視野に入れてカンバーバッチが体現するのは、尊厳を奪われた者の肥大化した怨念。互いの正義を信じる者同士が激突する。テロの時代の恐怖をモチーフに、「愛する者を守るため」という大義名分に伴う痛みへ踏み込む脚本があってこそ、策士策に溺れがちなJ.Jの技は遺憾なく発揮された。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

デキる仕事人の優良メーカー品

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

とっても良く出来ている! 特に突出した点はないのだけれど、『スター・トレック』という大人気長寿シリーズの最新劇場版として、マニアもビギナーも料金分は楽しめる映像とドラマの味加減が抜群。すべてのバランスが考え抜かれている印象だ。これは一点突破型に陥りがちな最近のハリウッド大作の中では貴重だろう。まさに「優良メーカー品」といった感じ。

『スター・ウォーズ』新シリーズの担当にも決定している監督・製作のJ.J.エイブラムスは、テレビと映画を股にかける当代きってのヒットメーカーだが、コアな映画マニアからは随分軽く見られている気がする。やはり『SUPER 8/スーパーエイト』が「スピルバーグの劣化コピー」にしか見えなかったのもデカいか? しかし今回の新作を観ると、ベネディクト・カンバーバッチの悪役も、『ダークナイト』のヒース・レジャーなどの先例を活かしつつ、「適温」に落とし込む腕がハンパない。良い意味でポピュリズムの権化みたいな才能だ。

例えば業績が悪化・停滞した会社に、こういう人が入ると息を吹き返すだろうなと思う。「出世する人」の仕事の見本として、本作を読解するのも面白いかもしれない(笑)。

この短評にはネタバレを含んでいます
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