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ボイリング・ポイント/沸騰 (2021):映画短評

ボイリング・ポイント/沸騰 (2021)

2022年7月15日公開 94分

ボイリング・ポイント/沸騰
(C) MMXX Ascendant Films Limited

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

森 直人

厨房とホールから上演(上映)開始!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ソクーロフの『エルミタージュ幻想』(02年)から始まったHD撮影による「全編ワンカット」映画の新たな成果。約90分、倫敦の高級レストランの内幕――多忙と混乱の一夜をノンストップで伝えるワーキングドラマ。この手法は演劇的緊張感に近づくわけだが、その空間がいわゆる舞台の限定性から離れ、リアルな現実空間の広がりや立体性を獲得できる利点がある。

最も近い印象を与えるのはブロードウェイの裏側を描いたイニャリトゥの『バードマン』(14年)だろうが、バランティーニ監督はルベツキ的な魔法に寄らず、ソリッドなガチ撮影でひとつの職場を「社会の縮図」的に圧縮した群像劇に仕上げた。主演S・グレアムはまさに当たり役!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

英国社会の今を見つめる90分リアルタイム・ワンショット映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 クリスマス直前の金曜日で賑わうロンドンの人気高級レストラン。まるで戦場のような厨房とフロア担当の舞台裏を克明に描きながら、その過程で改善されない労働環境や根深い人種差別、SNSを介した風評被害に過剰なサービスを要求する理不尽な客など、様々な社会問題が浮き彫りとなっていく。なるほど、社会風刺映画にもこういう表現手段があったのか!と膝を打つような作品。編集・加工一切なしの90分リアルタイム・ワンショットという緊張感が、アドリブを駆使した役者陣の芝居に気迫と説得力を与えている。イギリス=飯マズというのも今は遠い昔の話。世界屈指の美食の街となったロンドンの今を捉えた映画としても面白い。

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猿渡 由紀

まるでドキュメンタリーを見ているかのようにリアル

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

タイトルがまさにぴったり。ある忙しい夜、次々にトラブルが起こり、どんどん手のつけられない状況になっていって、沸点が高まっていくのだ。主人公はオーナーシェフだが、従業員や客のキャラクターもしっかり考えられている。役者もリアルで、まるでドキュメンタリーを見ているかのよう。好き嫌いは分かれるかもしれないが、あの衝撃的なラストも、個人的にはとても良いと思った。ただ、アメリカで先月配信開始になったレストランの舞台裏ドラマ「The Bear」を先に見ていなかったら、もっとインパクトがあったかも。このドラマもすばらしいので、この映画を気に入った人には断然おすすめしたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

走り出しだら止まらない

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ディナー・ラッシュ』から約20年。レストランが舞台の緊張感溢れる群像劇に前のめり状態だが、ガチで全編ワンショットという離れ業をやってのける! 今度もトラブル続きな飲食業あるあるに、三谷幸喜テイストの舞台劇感も見られるが、主人公のオーナーシェフが神経衰弱ぎりぎり状態というのが肝。謎のドリンクを飲みつつ、一触即発な人間関係とまさかのハプニングが、観る者の没入感を増していく。また、場面転換に繋がる見事な動線設計に圧倒されつつ、ジェイソン・フレミングのキレ芸も見どころ。肝心の料理はあまり美味そうに見えないが、賛否間違いなしのラストまで、走り出しだら止まらない刺激的な一本である。

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斉藤 博昭

怒涛の勢いで人気レストランの一夜を臨場体験。食欲も刺激!

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

レストランの夜を90分、1台のカメラがカット一切ナシで厨房やフロアを駆け巡るが、人物の出し入れ、各所の突発的エピソードが計算され尽くされ、われわれ観客も従業員の一人の気分に。映画のマジックが効果的に働く大胆チャレンジの成功例。
監督自身、レストラン勤務経験者なのも強味で、客側のハラスメントとか、一瞬手が空いた時間の密やかな行動とか、“日常で起こってる感”が尋常じゃない。1000人もの俳優から選んだだけあって、従業員もリアリティ満点で、出てくる料理も見た目で強烈アピールする。「(物語が)そこ行っちゃう?」とツッコミたい箇所もあるにはあるが、一瞬も息がつけない疾走感でランナーズハイになるのは確実。

この短評にはネタバレを含んでいます
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