ADVERTISEMENT

渇水 (2023):映画短評

渇水 (2023)

2023年6月2日公開 100分

渇水
(C) 「渇水」製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

ミルクマン斉藤

すり減っていく人間性を開放せよ。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

貧困家庭の水道料金未払いにクールに振舞いつつも真摯に取り組む水道局職員・生田斗真。しかし停水事案は次々発生し、その家族の生命に直截的な脅威が迫る。「3人でいてもいつも寂しそうだったでしょ」と吐き捨てた妻にも出て行かれ、空虚感に苛まれもする生田。ここでは物理的な問題だけでなく、現代人の心の渇きと潤いを求める静かな悩みが感じられる。じりじりと照りつける太陽の眩しさと熱量を画面に映し出す中、生田はネグレクトされる幼い姉妹とのつながりを通じて、徐々に人間性を解放させていくのだ。ただし、映画全体としてはパンチに欠け、生田のキャラクターの心情をより深く描き出すことができれば傑作となる可能性もあっただろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

不寛容な社会の在り方を問う力作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 人間が生きていくうえで必要不可欠なライフラインのひとつ「水」。だが、世の中には様々な事情から水道代を払えない人々が存在する。水道局に勤める主人公の仕事は、滞納者の自宅を訪問して水道代を徴収し、払えなければ規則に従って元栓を閉めること。それは他人の生存権を侵害する行為でもあると言えよう。それでも規則は規則、個々の事情など知りませんと水道を止めていた主人公。しかし猛暑の続く真夏のある日、貧困家庭の幼い姉妹と遭遇した彼は、自らの職務に強い疑問を抱く。規則だからと杓子定規に弱者を切り捨てて良いのか。むしろ、そんな無慈悲な規則の方がおかしくないか。昨今話題の入管問題にも通じるテーマを描いた力作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

心と身体を潤すクライマックス

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

電気・ガスに続く、“最後のライフライン”である水道の停水執行を行う局員の日常。料金を滞納する側にとっては、借金取りのような存在にも見えるが、彼ら自身も諸事情を抱えており、そこに『誰も知らない』のような母親に置き去りにされた幼い姉妹との交流が絡み合う。一見ヘヴィな話だが、原作から膨らませたドラマと手堅い演出、16mmフィルムによる質感との相性が良い。決して派手な作品ではないが、心と身体を潤してくれるクライマックスまで、いい意味で「白石和彌企画・プロデュース」の看板を裏切ってくれるだろう。また『波紋』に続き、“水”関連作に出演の磯村勇斗がここでもバイプレイヤーっぷりを発揮!

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

心身が渇く

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

この間”銭湯の映画”に出てたと思ったら今度は水道局員として水道を止めて回る役を演じる生田斗真、役柄の幅の広さを感じます。ライフラインとは本当に的確な言葉であることを改めて感じる1作。それは供給する側にも大きな葛藤を抱かせ、自分の仕事の在り方について答えの出ない迷宮に迷い込ませます。映画の中に”しょうがない人”は出てきても”悪い人”が出てこないのがまた堪えます。真夏の公開でなくて本当によかった。酷暑、猛暑のときにこの映画を見たら心身が枯渇してしまったことでしょう。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT