ADVERTISEMENT

スプリングスティーン 孤独のハイウェイ (2025):映画短評

2025年11月14日公開 120分

スプリングスティーン 孤独のハイウェイ
(C) 2025 20th Century Studios

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

相馬 学

タフなロックスターでもボスでもなかった男の閉塞の記録

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 音楽シーンの頂点に立ったにもかかわらず、覚えてしまう閉塞感。1981年のスプリングスティーンが感じていた、その正体を明かす。

 周囲のおだてをやり過ごしながらも違和は拭えず、恋に落ちても“俺は君の期待に応えられる男じゃない”と心情を吐露するほどに自分に自信が持てない。タフなロックンローラーというイメージを彼に抱いている方には大きな驚き。その背景に何があるのかは観て確かめてほしい。

 スプリングスティーンのファンとしては、貴重なデモ音源(先ごろリリースされた『ネブラスカ ’82: エクスパンデッド・エディション』収録のものもアリ)が多数使用されていることも驚きだった。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

伝説のアルバムに秘められた想い

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ボブ・ディランの『名もなき者』に続いて、とにかく手堅いミュージシャン伝記映画。コンセプトから録音まで、すべてにこだわったアルバム「ネブラスカ」誕生秘話だけに、後に発表される「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」に集約された骨太イメージではなく、“ボス”が抱えてきた父親との確執などの闇や、人気者ゆえの孤独が浮き彫りになっていく。音楽映画としての高揚感に欠けるものの、スコット・クーパー監督作らしい重厚な人間ドラマに痺れる。アルバム収録曲「ハイウェイ・パトロールマン」に影響されたショーン・ペン初監督作『インディアン・ランナー』を続けて観ることで、解像度がさらに上がること間違いなし!

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

「音」に物語を語らせる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

『クレイジー・ハート』で若くないカントリーシンガーを描いたスコット・クーパー監督が、「音」自体に登場人物の心理を反映させ、物語を語らせる。主人公は自分の部屋で一人で心情を歌い、それをカセットテープに録音し、その音質にこだわる。その音は、スタジオの高品質の機材を通すと変質する。そこで協力者たちは、主人公の望む音を再現するため、レコード盤の溝を掘る圧力の微妙な調整にまでこだわる。そうして生まれる「音」がスクリーンから聴こえてくる。

 スプリングスティーンは漠然としたイメージしか知らないので、実在の連続殺人犯スタークウェザーに興味をもち、フラナリー・オコナーを読み、SUICIDEを聴く姿が新鮮。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

一瞬が語る伝説の一生

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

今作も『名もなき者』と同様に年代記にするのではなくその人物の”ここぞ!”というタイミングを切り取り深掘りすることで、その人物を描き出すスタイルを採っています。この手法はその人物次第でどんな人物でも当てはまる手法では無いと思いますが、結果的にブルース・スプリングスティーンという人物に関しては非常に相性の良い手法だったと言えるでしょう。スプリングスティーンがスプリングスティーンとなった瞬間を切り取り、”生ける伝説”の始まりの瞬間を知ることができました。。難役に挑んだジェレミー・アレン・ホワイトの熱演は忘れがたいモノになりました。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

「ネブラスカ」と同じく、静かで素のままの美しさ

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

アルバム「ネブラスカ」と同じように、あえてアナログで、素のまま。静けさのある、詩的な美しさが心に沁みる。名声に混乱し、過去のトラウマにも悩まされ、自分探しをした30代はじめの主人公は、“ボス”ことスプリングスティーンというより、誰にも共感できるひとりの男性。その心の旅を追いつつ、彼が妥協せず、真の芸術を追求していけるために、今もマネージャーで親友のジョン・ランダウがいかに尽力したのかも描かれる。このふたりを演じるWジェレミー(ホワイトとストロング)はもちろんのこと、スプリングスティーンの父親役のスティーブン・グレアムもさすが。クライマックスの父子のシーンはとくに心を揺さぶる。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

カリスマの内面を突き詰めつつ、要所ではソックリさが感涙モノ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ミュージシャン映画らしい「カタルシス」は避け、ボスの一時期の内面に徹底的にこだわった。その意味で超純粋な伝記映画。監督らしく、描写は冷徹を貫き、それによって要所の感情の爆発が生きてくる。
曲の創作の苦闘や、デモ→アルバム音源への変換や売り方へのこだわりなど、とにかくプロフェッショナルな側面を打ち出し、アーティストの本質に迫った作り。

一方でスプリングスティーンの再現度はハイレベルで、特にステージのパフォーマンスは、ポーズや動きの完コピだけでなく、ジェレミー本人の熱唱がボスそのもの。葛藤するシーンや何気ない佇まいに、ジェレミーの憧れだという70年代のアル・パチーノの演技が“降りてきた”印象。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

人気の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT