ロングウォーク (2025):映画短評
ライター6人の平均評価: 3.8
デスゲームと友情、そのエモさにシビレる!
『ハンガーゲーム』シリーズの監督がS・キングの原作を得て新たに手掛けたデスゲームものだが、『バトル・ロワイヤル』に近い感触。
ひたすら歩き続け、脱落者は射殺、最後まで歩き続けた者が優勝するというデスゲーム。その中で参加者たちの間に友情や理解が生まれる。それだけに、誰かが脱落する度にエモい見せ場が発生。泣きの場面もあり、そういう点でも『BR』を連想させた。
射殺のバイオレンスは生々しいが、残虐な見世物にあらず。『BR』について深作欣二監督は“キャラクターの死を舌なめずりしながら描く気はない”と語ったが、本作にもキャラへの愛情が宿る。エモさの理由はそこにある。
戦争の本質を映し出す残酷サバイバル
軍事独裁政権下にある架空の’70年代アメリカ。一定の速度で歩き続けねばならず、3回警告を受ければその場で射殺、最後の1人になるまで休めないという、毎年恒例の国民的競技「ロングウォーク」に参加した若者たちの過酷なサバイバルを描く。スティーブン・キングが大学時代に書いた小説の映画化。経済的徴兵制よろしく賞金を餌に貧困層の若者を参加させ、綺麗事の大義名分を掲げながらも実態はただの血みどろ残酷ショーでしかない「ロングウォーク」はベトナム戦争のメタファー。権力者が己の地位や権威を守るためのイベントで、若者たちが無意味に殺されていく様は戦争の本質だ。それだけに、改変されたラストには少々不満が残る。
『ハンガー・ゲーム』監督は、まさに適任者!
この原作がなければ、「バトルロワイアル」が誕生しなかったといえるデス・ゲーム小説の原点が、ようやく映画化。ギミック満載のフォロワーが出尽くした後だけに、恐ろしいほど地味であることは否定できないが、そこは同じフォロワー作『ハンガー・ゲーム』シリーズで名を挙げたフランシス・ローレンス監督。まさに適任者がドラマティックに仕上げてきた。『スタンド・バイ・ミー』に通じるスティーブン・キングならではのエモい友情物語に『ベスト・キッド:レジェンズ』のベン・ウォンも参戦するなか、本作から『サンキュー、チャック』と、マーク・ハミルがキング原作映画に連続出演した意味合いも感慨深い。
ワンシチュエーションへの徹底が誠実。60年代の問題作も蘇る
1969年の映画『ひとりぼっちの青春』は、踊り続けるコンテスト“死のマラソンダンス”を描き、衝撃的トラウマを与えたが、同作の原作にS・キングが触発された説もある本作も、徹底して「歩き続ける」ことをカメラが捉え、同様の恐怖に集中。主人公らの過去のシーンも挿入されるがごくわずか。ただ、その徹底ぶりで単調に感じるキライはある。
参加者を演じた若手俳優たちは、肉体の限界や空腹、睡魔、排泄欲求との闘い以上に「心が崩れていく」プロセスを各々、苦心しながら好演。中盤からは助け合いの精神がエモーショナルに加速する。人間にとって確実なのは何か? 観終わった後、その答えを突きつけられ、愕然とするのは間違いない。
歩行者の疲弊に連れて、風景が輝きを増す
一定以上の速度で歩き続けなければならない長距離歩行、しかもそれに参加しないという選択肢はない----という状況はもう、生きていくことそのものではないか。しかし、参加者がみな10代の青少年たちなので、おそらくこの年頃だけに可能であろう、参加者同士の友情が生まれもする。自分よりも他の誰かを尊重するという行動も起きる。
そんな物語を書くスティーヴン・キングも物凄いが、それをそのまままっすぐに、歩き続ける少年たちを映し出し続けるという、フランシス・ローレンス監督の演出が物語に合致。果てしなく続く田舎の一本道。歩き続ける少年たちの疲弊が増していくにつれ、辺りの風景が美しさを増していく。
実現に時間がかかったことはマイナスでなかった
原作小説を映画化する企画が出たのは80年代。その間、「バトルランナー」「ハンガー・ゲーム」「イカゲーム」など、社会の弱者あるいは若者が命をかけて戦う様子が見せ物にされるという設定の作品がヒットしたが、「今さら」感はない。むしろこのタイミングになったことで、切実さが増した。第二次トランプ政権のアメリカでは、言論の自由、政権に対するメディアの忖度に危機感が増しているのも理由のひとつ。
予想を裏切るラストも良い(実は違うバージョンもあったらしい)。主演ふたりの相性も最高。毎回違う顔を見せるデビッド・ジョンソン(『ライ・レーン』『エイリアン:ロムロス』)は、間違いなく今最高に注目の若手。



























