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シラート (2025):映画短評

2026年6月5日公開 115分

シラート
(C) 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFONICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

なかざわひでゆき

既存ジャンルの枠に収まらない唯一無二の体感型映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 モロッコ南部の砂漠地帯で行われるレイヴ・パーティ。行方不明の娘を探すスペイン人の父親と幼い息子(娘の弟)は、そこで知り合ったレイヴァーたちと捜索の旅へ出る。どこへたどり着くとも知れぬ過酷で理不尽で不条理な旅路は、さながら昨今の世界情勢の写し鏡であり、さらに言えば我々のままならぬ人生そのものでもある。この物語のない物語を、観客は爆音のEDMサウンドと神秘的な環境音が混在する圧巻の音響デザインと併せて疑似体感することになる。海外ではアントニオーニの『砂丘』と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の不可解な融合との評も。あながち間違ってはいないが、しかしそれでは伝わりきらない魔力を持った映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

今、鳴る音を味わう

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 視覚にも、聴覚にも、強烈。強い陽光が照りつける砂漠、巨大なスピーカー、膨大な人々が集合するレイヴパーティ。その光景は、2023年10月に砂漠の音楽フェスで起きた事件を連想させもする。パーティが終わっても、大音量が鳴り続ける。人間が、いとも簡単にいなくなる。人間が、あっけなく死ぬ。パーティ参加者が言う「音は一つも同じじゃない。今、鳴る音を味わうだけだ」という言葉がこの世界を象徴する。

 音楽は、フランス生まれ、ベルリンを拠点に、ラスター・ノートンなど数々の電子音響レーベルで活動してきたカンディング・レイことダヴィッド・ルテリエ。映画館の高音質の大音量で振動として体感したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

内臓に響く世界とサウンドデザインの振動

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

凄まじき“体感“型。一見『マッドマックス/怒りのデス・ロード』のフォロワー風だが、監督のO・ラシェが向かうのは、あの快楽的カオスより、もっと深くエクストリームな“実験”だ。消えた娘を追う父と息子――『捜索者』の執念と、『眼には眼を』の砂漠の不条理。スピーカーから響く重低音が地平線を揺らす黙示録的な空間の中で、音と砂と光が我々の感覚を支配していく。

やがて旅は『恐怖の報酬』を思わせる極限の緊張に突入。レイヴの轟音は風景を侵食し、砂漠は現実と幻覚の境界を溶かす。苦痛すれすれの倒錯的なアクションとスリラーの快楽は、世界の果てに向かう儀式のようにも見える。この道の先にあるのは救済か、それとも終末か。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

観終わってからしばし呆然とする

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

とてつもなく衝撃的。観終わってからしばらく呆然とし、ショックは数日間抜けない。ただし、冒頭にそんな雰囲気はなく、ひたすら音楽が流れて人々が踊り続けている。そこにいる人たちはとてもリアル。実際、娘を探しにやってきた父を演じるセルジ・ロペスと子役を除く主要キャストは、みんな演技の素人なのだ。何も考えず好きなことをやって生きている彼らがどのようなジャーニーを辿ることになるのか、観客には全く予測がつかない。音響部門でもオスカーに候補入りした通り、サウンドもムードに大きく貢献。必ずしもみんなに勧められる映画ではないかもしれないが、観るのであればビッグスクリーンで、ほかの人と体験を共有したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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