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さがす (2021):映画短評

さがす (2021)

2022年1月21日公開 123分

さがす
(C) 2022『さがす』製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

なかざわひでゆき

日本社会とそこに生きる人々の闇を炙り出す問題作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 指名手配中の連続殺人犯を見つけたと言って消息を絶った父親、その行方を懸命になって探す中学生の娘、歪んだ倫理観のもとで凶行を重ねる連続殺人犯の若者。初めのうちは単純に思えた一連の出来事だが、それぞれの視点から真相を紐解いていく事で、やがて思いもよらぬ全体像が見えてくる。予想を裏切る展開の連続はなかなか見事で、登場人物たちの心の闇を浮き彫りにしていく仕掛けも非常に巧い。そのうえで、生きること自体が過酷な現代の日本社会にあって、何が許されて何が許されないのか、その境界線を決めるのは果たして誰なのかという問いを観客に投げかける。面白いオジサンのイメージを逆手に取った佐藤二朗の怪演はまさに新境地。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

前情報を入れず、激烈極まる映画体験を味わってほしい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

タイトルが示すように、基本設定は中学生の娘が失踪した父親を「さがす」物語。その原因に迫るべく、時間をさかのぼる展開は、この手の作品として意外性はない。
しかし、父娘以外のもう一人の重要キャラが本筋に侵食してきたとたん、とてつもなくドラマが暴走し、いい意味での異常な世界へと突入していく。サプライズを味わうためにも、これ以上の情報は入れずに作品に向き合ってほしい。
人間の不条理、社会問題まで取り込んで、これほど激烈サスペンスに仕立てた監督の才能には敬服。
俳優では、独特のひょろっとした体躯に謎と狂気をまとわせ、朝ドラ「おかえりモネ」などと同一人物とは思えない清水尋也にノックアウトされた。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

いきなり、ベスト級の衝撃!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

尊厳死や貧困問題といった、かなりヘヴィなテーマを扱いつつ、連続殺人犯を追って行方不明になった父親を捜す娘の青春冒険モノの要素も入り混じった、恐るべき社会派エンタテイメント。間違いなく代表作なソン・ガンホ感満載の佐藤二朗はもちろん、『空白』が予告に過ぎなかった「じゃりン子チエ」感満載の伊東蒼が魅せる芝居に圧倒される。そして、片山慎三監督は各キャラの視点から時系列を遡りつつ、前作『岬の兄妹』でも感じられた胸クソ悪さやブラックな笑いなどの持ち味も随所に散りばめた構成で、奇才から巨匠へと上り詰めた感アリ。「2022年の日本映画は、『さがす』から始まる!」と断言できるベスト級の一本だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

片山慎三、また凄い映画を撮っちゃった!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『岬の兄妹』よりもテクニカルに、映画としての装甲を増加しつつ重量感も機動性も申し分ない。コーエン兄弟、今村昌平、『セブン』に『チェイサー』等々の記憶が絡まるが、最も近いのはイニャリトゥの『アモーレス・ペロス』か。三部構成で主体のバトンリレーを行い、社会のボトムに蠢く有象無象を浚っていく。西成、多摩、離島。エリア選びに地政学的な眼を光らせ、犯罪の真っ只中にずっぽり突っ込む。

『空白』でいきなり退場しつつも鮮烈な存在感を放った伊東蒼が、ネイティヴの大阪弁で全編をパワフルに牽引。役者陣が素晴らしく、メイン級はもちろんのこと松岡依都美、石井正太朗、康すおん等全てのキャストが持ち味を活かしきっている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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