劇場を戦場に変える音!音!音!

塚本晋也監督『野火』同様、敵はほぼ写らず。
主観映像で捉えた戦争映画だ。
だが臨場感溢れる音が、敵の存在を確かに感じさせてくれる。
迫り来る戦闘機のプロペラ音。
どこからともなく飛んでくる銃弾。
嫌な予感しかしない、一瞬の静寂。
耳鳴りのように残るこれらの音が、ここから一刻も早く逃れたいとする主人公たちの心情と共鳴する。
一方で、これは国民性か、
戦場から生きて帰ってきた人を恥と蔑んだ史実を知るだけに、”史上最大の撤退作戦”に複雑な心境を抱く人も多いだろう。
約40万人の命を救うという英断を下したリーダーの姿を見ながら、多くの犠牲を生んだ自国の歴史を振り返らずにはいられないのだ。