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グランド・ブダペスト・ホテル (2013):映画短評

グランド・ブダペスト・ホテル (2013)

2014年6月6日公開 100分

グランド・ブダペスト・ホテル
(C) 2013 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.8

なかざわひでゆき

一つの頂点を極めたウェス・アンダーソンの美学

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 東欧の由緒正しき高級ホテルを舞台に繰り広げられる、サスペンスあり謎解きありアクションありの賑やかな作品だが、そこはウェス・アンダーソン監督。あえて狙いを外したユルめのユーモアと軽妙なタッチが持ち味なので、人によって好き嫌いは大きく分かれそうだ。
 とはいえ、細部まで徹底的に凝った美術セットやカメラワークには誰もが目を奪われるはず。古式ゆかしいミニチュアやマットペイントなどを用いて再現される’30年代のヨーロッパは、黄金期のハリウッド映画を彷彿とさせるノスタルジーに溢れ、まるでアンティークのドールハウスを眺めているようなワクワク感を味わえる。監督の懐古趣味的な美学が一つの頂点を極めた作品だ。

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山縣みどり

レイフ・ファインズのコメディ・センスに仰天

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

様式美となった舞台美術や衣装、ムービング・ショットはじめとする独特の映像を見ればウェス・アンダーソン印なのは一目瞭然。ティルダ・スウィントンをはじめとするウェス組メンバーも登場し、ホテル業界を仕切る秘密組織の活躍といったオフビートな笑いを提供してくれる。でも最高のサプライズは、初参加のレイフ・ファインズ。紳士然としたコンシェルジュ職の裏に俗物の素顔を隠した主人公グスタフを軽々と楽しそうに演じている。漫画めいたキャラクターが上品なクィーンズ・イングリッシュで話すだけでもうさん臭いが、一挙一動が無責任男っぽくていい感じ。シリアス路線の俳優かと思っていたが懐が相当深そう。さすがの演技派だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

おもしろうてやがて哀しき。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

執拗なまでのシンメトリ。完璧に統一された色彩設計。水平・垂直を旨とするキャメラ移動。すでにウェスは自己のスタイルを確立しており、本作は行きつくところまで来た感がある。同時に本作はウェスの新しい局面を見せていて、それは自分やら家族やら、内の世界に縛られていた彼がなんと「歴史」を語り出したこと。多分に寓話的だが具体的にはオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊そしてナチスとの併合だ。R.ファインズ扮する主人公がこだわった厳格な仕事ぶりや道理ある生き方は「すでに彼の時代のものでさえなかった」という最後の述懐、そしてS.ツヴァイクの名が喚起する「滅びの美」に胸がいっぱいになる。作品自体は軽妙なのだが。

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平沢 薫

ウェス・アンダーソンの世界には"枠組み"がよく似合う

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 文字通り画面の隅から隅まで、ウェス・アンダーソン監督の美意識が詰まってる。これまでも編集のテンポはデザインの一部だったが、今回は俳優の動作のリズムまでが意匠の一部。多数の登場人物たちそれぞれの動きが、緻密な模様を描き上げる。

 しかも、モチーフはヨーロッパ。この監督が、彼の資質とは対極にあるインドすら彼独自の世界に変貌させてしまうことは「ダージリン急行」で証明済みだが、やっぱり、お似合いなのはヨーロッパ。

 物語は、今は失われてしまったある美学を追想する、という枠組み内で展開。枠組みの中に純粋世界を構築するという趣向も、監督の美学と相乗効果を挙げている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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