国宝:映画短評
国宝
小説の視覚化と、役者の魂が至芸と化すプロセスが重なる奇跡
壮大で深遠な原作を3時間弱に収めるうえで時代を一気に飛ばし、急展開あり、重要なキャラをほぼ削除。中盤からは種々エピソードの組み替えや改変に苦心が見てとれる。人物の秘めたる心情、特に主人公・喜久雄が歌舞伎に憑かれた根源は、やはり原作に比べると表面的で淡く感じてしまう(なので「読む」楽しみも!)。
それでも吉沢亮、横浜流星の全編の演技と歌舞伎の芸の習得は、今を生きる俳優として最高レベルに達しており、ドラマと演目のシンクロの妙、映像としての歌舞伎の見せ方など、映画的カタルシスは尋常ではない。原作者が忍ばせたテーマもポイントの場面で濃密に掬いとられており、間違いなく2025年の日本映画を代表する一本。
この短評にはネタバレを含んでいます