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ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた (2022):映画短評

ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた (2022)

2025年1月31日公開 111分

ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた
(C) 2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

轟 夕起夫

ラブ&マーシー(=愛と慈悲)の物語、再び!

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

ビル・ポーラッド監督はまたも映画に、魔法をふりかけた。

すなわち前作『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(14)では「断片と総体」を主題とし、ポール・ダノとジョン・キューザックの二人一役(さらにプラスαの趣向!)でもって天才音楽家の複雑なキャリアを連結、統合してみせたのだが、それは物事の“コントロール”をめぐるドラマでもあり、実在の兄弟デュオ「ドニー&ジョー・エマーソン」に肉薄した今作はその試みの先を見せてくれるのだ。

肝となるのは楽曲や、人生を刻むビート。ままならずに揺らぐリズムとどう対峙していくのか。再度、プラスαの趣向と、そこから生まれた“終わらないメロディー”に視界が滲んだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

夢を見続けることの大切さと厳しさ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 音楽で身を立てる夢を追い続け、気が付けば40代半ばになってしまった無名のミュージシャン。30年前に兄と自主制作したアルバムが「隠れた名盤」として発掘されたことから、思いがけず時の人となるものの、しかし素直に喜ぶことが出来ない。息子の音楽活動を支えるため私財を売って苦労を重ねた父親、同じく弟の夢を叶えるため自分の夢を諦めてくれた兄、そしてもはや才気溢れる10代の若者ではなくなってしまった自分。なぜ今なのか、どうしてあの頃じゃなかったのか。実在の兄弟デュオ、ドニー&ジョー・エマーソンをモデルに、夢を見続けることの大切さと厳しさ、家族の素晴らしさとややこしさが描かれる。全ての夢追い人必見!

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

これほど「人柄」の良い傑作音楽映画は稀少!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ラブ&マーシー』でB・ウィルソンを描いたビル・ポーラッド監督が本作を手掛けたのは、ピッチフォークでドニー&ジョー・エマーソンの再発盤を評したアンディ・ベータのレビュー内容に導かれたものとも言えるだろうか。監督は当初『シュガーマン』に似た題材だと懸念を示したらしいが、本人達と家族に会って彼らの人柄から素敵なオリジナル脚本を編み出した。

遅れてきた「評価」の皮肉。この数奇な運命に試されるのは家族の根の愛情だ。カインとアベル型に近い兄弟/父親の関係性を示しつつ、とことん融和的な人間信頼の形を見せるのが凄い。カナダに近い米フルーツランドの農場の風景も、音楽の魔法を生んだ聖地に相応しい詩情を奏でる。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

特別の人ではなく、多くの人についての物語

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 静かで、物悲しくて、奥深い。“実在のミュージシャンについての映画“という言葉から想像するのとはまるで違う、選ばれた人ではなく、ごく普通の、この世の中にたくさんいる人たちの物語。才能を褒められ、家族にも応援され、夢と希望にあふれていた若い頃。もう忘れていたその頃が、突然目の前に現れたら。周囲は素直に喜んでくれても、その頃の歌を歌っていた自分と今の自分は違う。
 表向きにはあまり大きなことが起きないストーリーを引っ張るのは、ケイシー・アフレック演じる主人公の内面の葛藤。せりふで説明しすぎることなく、正直かつ繊細に描かれる家族の関係もリアルで共感できる。小さいけれども、胸を打つパワフルな作品。

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平沢 薫

”あの頃”との再会が、痛みと気づきを運んでくる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 実話に基づき、10代の頃に発売したアルバムが約30年後に評価されたミュージシャンを描くが、それが単純にラッキーな物語にはならないところが本作の魅力。それは主人公に敗れた夢に再び向き合う痛みをもたらすが、その一方で目を背けていたことを直視する契機にもなる。彼の若き日々を描く映像が眩しく美しく、現在との対比も胸を打つ。

 監督・脚本は『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』でザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンを描いたビル・ポーラッド。ケイシー・アフレック扮する主人公の若き日を演じる、『ハニーボーイ』のノア・ジュプが初々しい。ボー・ブリッジスが演じる心から息子を信じる父親像が暖かい。

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斉藤 博昭

観た人の多くが「あの頃の自分」と対話したくなる仕様

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

若い時代に得た栄光。一瞬だけの煌めきの記憶が、年齢を重ねた後に甦る。その喜び、もどかしさ、後悔、新たに生まれる葛藤で、ケイシー・アフレックの個性が最適だと本作は証明する。若き自分との対話など、ケイシーの“よるべなき頼りなさ”が超絶マッチ。
一方で10代の天才俳優ノア・ジュプは、学校内のライブで発揮する美声で魅了。もっと彼の歌のシーンをいっぱい観たかった。
息子たちの夢を後押しする両親の思いが優しく、かつ痛いほど伝わるドラマだが、最も切ないのは兄弟デュオの兄の立場。才能に恵まれた家族に対する彼の心情こそ、本作を観る人の多くが共振するのでは? 各人物の本音をあえてセリフで示さない脚本が奥ゆかしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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