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勝手にふるえてろ (2017):映画短評

勝手にふるえてろ (2017)

2017年12月23日公開 117分

勝手にふるえてろ
(C) 2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

くれい響

女優・松岡茉優のための映画。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

紙一重である“痛さと乙女心”を行ったり来たりと、こじらせヒロインを見事に演じ切った松岡茉優。彼女じゃなきゃ失敗したとも思える難易度の高い原作だけに、これまでも女子をテーマに描き、『でーれーガールズ』で覚醒した感のあった大九明子監督による脚本の当て書きも納得で、最高&最強の逸材を迎えたことで、自身の最高傑作を更新。休憩所での昼寝シーンやら、異常なまでの「タモリ倶楽部」愛やら、過去最高にいい味を出している石橋杏奈など、ツボを突いた演出も多し。終盤における失速感は差し引いても、『スウィート17モンスター』と双璧をなす、17年を代表する女子映画になったといえるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

理想から解き放たれ、生き始めるまでのブレーキなき助走

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 「こじらせ」や「イタイ」という自虐的にこそ使う言葉に託されたキャラも、松岡茉優が演じてみせれば、受け止めて無化する強靭さと愛らしさに変換してしまう魅力を秘めている。身体が実存するこの世界ばかりが現実ではなく、脳内で妄想する世界もまた現実の一部であることを、彼女の演技の振り幅は軽々と証明してみせる。これは、こうありたいと願う理想から解き放たれ、地に足を付けて生き始めるまでのブレーキなき助走の歌。意外にも初主演作だというが、松岡は余力を残したハジケっぷり。シリアスからコミカルまで、その引き出しは無限のようだ。撮影現場で歌った同録音声だという彼女の歌声には、計り知れない生命力が内包されている。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

良質のジャンル映画であり、それ以上

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

松岡茉優の印象がアナ・ケンドリックと重なる時があった。単にハリウッドライクってことではなく、綿矢りさが一人称で記したヒロインを映画用のキャラとして肉体化し、「コメディ」の枠に落とし込む様が完全にプロの仕事。それが結果的に日本映画では稀な達成になったのだと思う。脳内からオートマ的に高速でだだ漏れる言葉=台詞の発声もきっちり聞き取れて気持ちいい!

こじらせた自意識や他者の問題を扱った「共感」系としてもエモーショナル。スタッフ&キャストの職人技が幸福に集合して一定ラインを超えた感じ。ウザ可愛いピュアネスが最高な渡辺大知はどこか無声喜劇の役者の味。『妹の恋人』のジョニデを懐かしく連想したりも。

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なかざわひでゆき

愛すべきこじらせ女子の暴走劇

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 一言で言うなら、こじらせ女子の暴走劇である。思い込みが強すぎるゆえに勝手な恋愛妄想や被害妄想を膨らませていくヒロイン。片思いのイケメンに一方的な運命を感じてのめり込むのはいいとしても、自分に好意を寄せるフツメンは平気で振り回して足蹴にするし、心配してくれる女友達の善意も曲解して逆恨みする始末だし。本当にどうしようもない(笑)。
 しかし同時に、器用に生きられない女性の孤独や哀しみ、その揺れ動く切実な乙女心も痛いほど伝わり、いつしか共感せずにはいられなくなる。松岡茉優の好演、ミュージカルまで交えたポップな演出、生き生きとしたセリフの歯切れの良さも手伝い、愛すべき作品に仕上がっている。

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平沢 薫

リアル/非リアルの切替えが絶妙な"痛快"コメディ

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 リアルと非リアルの混合具合が絶妙。リアルな描写の中に、唐突に非リアルな光景が出現するだけでなく、この2つが細かく切り替わる。その配合の妙には、リズムが果たしている役割が大きい。映像のリズムはもちろん、主人公の感情の振幅の大きさと大仰な動き、とても現代的な言葉のリズム、その緩急が組み合わせられて映画が躍動する。
 主人公は、恋愛を筆頭にいろんなものに固執する傾向のあるこじらせ女子だが、ユニークなコメディ演出により、観客が主人公のイタさに共感するだけでなく、それを笑えもするようになっている。イタイだけでは終わらない、自分のイタさを笑ってちょっとスッキリもする"痛快"コメディだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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