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アド・アストラ (2019):映画短評

アド・アストラ (2019)

2019年9月20日公開 123分

アド・アストラ
(C) 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.4

ミルクマン斉藤

『スター・トレック』的宇宙観全否定。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

いわば宇宙版『闇の奥』…つまり『地獄の黙示録』。といってもカーツ大佐は帝国を作りそびれて朦朧の境にある。ブラピは終始、テレンス・マリック映画のような独白を繰り返してぶつぶつ悔悟するが、その割に行動は荒っぽく事態を悪化させるばかり。「ソラリス」的なリアルでチープなセット(ロケ?)はそれなりのリアリティがあり、海王星ヴィジュアルなどSFXの美しさを堪能できもするのだけれど、中身の薄っぺらさは隠せない。まあ、この空虚感に満ちセンス・オブ・ワンダーを否定する味気なさはカーツの「恐怖だ恐怖だ」に通じるし、なんだそりゃなラストも含め、ひょっとするとJ.グレイはタイトルとは真逆の悪意でこれを作ったのかも。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

ブラピの感受性豊かな芝居は見応えあり

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 かつて地球外生命体を探索するため「星の彼方(=アド・アストラ)」へ旅立ち、そのまま消息不明となった父親の生存が確認され、しかも人類の脅威と見做されたことから、その息子が真相を探るべく宇宙へと向かう。『地獄の黙示録』の父子版とも言うべきプロットを、『2001年宇宙への旅』的な世界観で描いたという印象。ほかにも『インターステラー』や『ゼロ・グラビティ』などを彷彿とさせる要素も多く、リアリズムを重視したビジュアルの完成度は非常に高いが、いろいろな意味で既視感は否めない。主人公の内面に焦点を当てたストーリー展開も起伏に乏しいが、その分ブラッド・ピットの繊細な感情表現を伴う芝居は見応えがある。

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くれい響

いろいろと思わせぶりSF

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

宇宙人ジョーンズを始め、『スペース カウボーイ』出身のドナルド・サザーランドに、今度もやっぱり地球に残されたリブ・タイラーと、思わせぶりなキャスティングに期待は高まるが、主軸はあくまでもブラピ演じる少年時代に父親に棄てられた男の再生の旅。別に悪くはないのだが、当初の人類の危機などの諸問題が放置状態。結局は『地獄の黙示録』からの、『2001年宇宙の旅』やりたかった感が強く、なんだかんだ盗賊団との月面走行車での爆走チェイスしか残らない。IMAXで観れば、冒頭の事故シーンなどもそれなりに堪能できるが、それも『ゼロ・グラビティ』の二番煎じといってしまえば、それまでかもしれない。

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猿渡 由紀

無限に広がる舞台で語る、細やかな内面の物語

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

宇宙という未知の世界を舞台にしてはいるが、これはひとりの男の心の中のドラマ。ずっと前にいなくなった父とコンタクトを取るという突然のミッションを受けたのをきっかけに、主人公は、長い間抑圧してきた疑問や怒り、父への複雑な感情に向き合うことになる。彼の物理的な旅と、心理的な旅が、パラレルで描かれていくのだ。その心の揺れを、セリフがない数多くのシーンでも、細かく、信憑性たっぷりに表現していくブラッド・ピットの演技こそ、今作の最大の見どころ。大スターであるだけでなく真の実力派でもある彼に、そろそろ演技部門でもオスカーをあげていい頃ではないだろうか。

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斉藤 博昭

果てしなく遠く、そして限りなく内に向かう宇宙の旅

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

空想科学とリアルな未来。そうしたSFに求められる要素を、今作はきっちりと押さえている。宇宙における人間の生活にキャッチーな描き方も盛り込み、ワクワク感を高めることに成功。明らかに常識を無視した設定や描写も、SF世界として受け止めれば意外なほど楽しめる。アクション、衝撃での演出がきっちりツボを押さえているからだ。

あとはブラピの主人公にどこまで感情移入させるかだが、そこはあえて放棄している感がある。宇宙空間での孤独が妙にベタつかず、ミッションが徹底してクールに貫かれることで、非日常の空想世界がドキュメントのように迫ってくるのは、狙いどおりか。熱演せずに、感覚に訴えるブラピのアプローチも大正解。

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山縣みどり

孤独と対峙したとき、人間はどう変わっていくの?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

宇宙ステーションから地球に落下した主人公が生き延びる冒頭でアクション大作かと思いきや、心の傷ゆえに他人とコネクトできない宇宙飛行士の心の旅だった。父子ドラマに『地獄の黙示録』的なミステリー要素を絡ませて主人公の心模様を叙情的に描くあたりはJ・グレイ監督らしさだが、今まで以上に完成された印象を受けた。B・ピット演じる宇宙飛行士の人生観や孤独観が詰まったモノローグはかなり意味深で、アンジーと破局直後に出演した映画ということもあり、彼自身の考えも台詞に入っているのかもと思わせた。それゆえ、キャラへの感情移入も半端ではなく、成熟した演技は賞レースにも参戦できそう。

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平沢 薫

宇宙空間の壮大さ、親と子の想いの身近さ

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 やはり宇宙空間に充ちる光は、冷たくクリアで心地よい。この光の質感を通じて、人と接することが苦手な主人公がひとりで宇宙にいる時に感じる心地よさが共有できる。
 物語は、極大/極小の対比の妙で構成。海王星へと広がる大宇宙の巨大さ未知さ/息子の父への思いの身近さ。並行して、"ひとりであること"と"他者と出会うこと"の、息子と父それぞれの形が描かれていく。それを息子が想いをモノローグで語るという形式で描く思索的な物語でありつつ、そこに留まらないのが本作の魅力だろう。父の真意を巡るサスペンス、月面走行車での銃撃戦、宇宙空間でのサバイバル術のスリル、近未来の宇宙観光旅行の気分まで味あわせてくれるのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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