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クライムズ・オブ・ザ・フューチャー (2022):映画短評

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー (2022)

2023年8月18日公開 108分

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
(C) 2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. (C) Serendipity Point Films 2021

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

相馬 学

臓器摘出は新たなアート、手術は新たなセックス

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 8年ぶりの新作というだけでも嬉しいのに、らしさ全開であることが、さらに嬉しくなるクローネンバーグ監督作。

 環境に応じた人体の進化、肉体とテクノロジーの融合、そして人間の強烈なオブセッション。『イグジステンズ』と『クラッシュ』が絡み合うのみならず、『裸のランチ』を思わせるグロテスクなビジュアルも加わり、これはもうクローネンバーグの独断場。

 臓器の摘出がアートと化し、手術という行為が性欲を喚起させる未来社会。変態と言われればそれまでだが、マイクロプラスチックが血管内に入っていると言われる現代をベースにしたSFは、非現実と現実の境界を曖昧にしながら、見る者を魅了していく。凄い!

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

こんなのに魅惑されるんだから僕も同類です。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

最初期の蠱惑的な自作実験映画のタイトルを借りただけあり、すべてがクローネンバーグ印の容赦なき究極ヘンタイ映画といっていいんじゃないか。想念による肉体改造、有機物と無機物との結合を主題にあまたの文化に影響を与えてきた彼だが、これほどイマジネーションの軛を外した作品は稀。「ボディ・アーティスト」という名を冠した新臓器創出(&解剖、肉体変造)に惑溺するアンダーグラウンドな物語を、CGなどまったく使わず、これまで開拓してきたクラフトワークな特殊造形に徹した生々しい描写が禍々しい。そんな作品に、自ら望んでおかしな映画にしか出ない超有名俳優が結集してるんだから映画はまだまだ明るいぞ!

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斉藤 博昭

「内臓ショー」を芸術に昇華させる巨匠の味わい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

クローネンバーグだからこその題材・設定で、80歳を迎えた巨匠の、枯淡の味わいもある作家映画。その意味で必見。息子の過激な作風(こちらも勢いは評価してます)と違い、シュールな世界を芸術に昇華させている。
体内に生まれる新たな臓器/プラスチックを食料にする…などボディホラーとしての要素の描写も、おぞましさや不快とは無縁で、劇中でのエピソードと同様、「パフォーマンス・アート」として高尚な気分で見つめ続けられるから不思議。
ただ同監督の同系列作『戦慄の絆』『クラッシュ』などと比較すると、震えるほどの「官能」は薄めのような。重要なシーンでの会話がややもったいつけた印象で、作品の流れを止めているのが残念。

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猿渡 由紀

衝撃のビジュアルも、いかにも古典的クローネンバーグ

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

デビッド・クローネンバーグがホラーに立ち戻るのは「イグジステンス」以来。この脚本もその頃に書かれたものがベースになっているとのことで、古典的なクローネンバーグらしさたっぷり。それはつまり相当ショッキングなビジュアルもあるということ。つい手で目を覆ってしまったシーンも少なくないが、当時の彼の映画を知っている人なら覚悟ができているだろう。コンセプトは非常に挑発的で、面白い。しかしながら、もうちょっとその先に何かあればよかったという気もしなくはない。組むのがこれで5度目のヴィゴ・モーテンセンは、クローネンバーグの独自の世界を完璧に体現している。レア・セドゥ、クリステン・スチュワートもとても良い。

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なかざわひでゆき

ただの原点回帰に終わらないクローネンバーグ最新作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 デヴィッド・クローネンバーグ監督が、久々に自身のルーツへ回帰したような近未来SFホラー。人体の変容と進化を巡る哲学的なストーリーは少なからず取っつきにくいものの、一方で『ザ・ブルード/怒りのメタファー』や『ヴィデオドローム』、『裸のランチ』など過去作との類似性に思わずニンマリしてしまうファンも多いことだろう。それでいて視点は極めてコンテンポラリー。いわゆる懐古趣味的な集大成とは一線を画す。若い世代がこれを入り口として、クローネンバーグ作品の深淵なる世界を後追いするのもまた良かろう。それにしても、御年80歳にして枯れることも丸くなることもない、異端の変態映像作家っぷりは嬉しくなりますな!

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平沢 薫

クローネンバーグが原点回帰

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 クローネンバーグの映画では、初期作品から、人間の内部にある意思、情念、思想が、その人間の身体を変形させ、時にはその変形物が身体を離れて動き出す。本作はこの"身体の変容"というテーマに立ち戻り、さらにそれを推し進める。主人公の体内で未知の臓器が生じていき、彼はその摘出をパフォーマンスアートとして人々に見せる。

 テーマの原点回帰と同期して、この監督らしい奇妙な機器たちも復活。人間の咀嚼を補助する椅子、身体の痛みを取り除く寝具などの医療器具が登場、その造形が昆虫や人骨を連想させる。それらは『戦慄の絆』の現代美術のような手術器具や、『裸のランチ』の喋るタイプライターにどこか似ている。

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村松 健太郎

イズム健在

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

久しぶりにいわゆる”ボディーホラー”に還ってきてくれたデヴィッド・クローネンバーグ最新作。近年は内面の変化がもたらす”人の変化(へんげ)”を描いてきましたが、ベストパートナーとも言うべきヴィゴ・モーテンセンが主演に還ってきてくれたことで、久々に本領発揮と言ったところです。今作のヴィゴ・モーテンセンがまたクローネンバーグに似てきていて、本当に分身の様です。レア・セドゥとクリステン・スチュワートも今回がだからできる役どころを楽しんでいるように思えます。独特の世界観に身を浸して見ましょう。

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森 直人

至高のクローネンバーグ大博覧会!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

これ最高。まさに本来のクローネンバーグ、その異常天才性が80歳にして狂い咲き! しかも入門編にもなる判りやすさがあり、テクノロジーと人間の肉体の相関や臓器系のアートヴィジョン、それにまつわる風刺性と官能性も明快に出ている。元々1970年にほぼ同じタイトルの実験映画を撮っており、今回は最初期の構想をついに理想的な形で完成させたのでは。

盟友キャロル・スピアの美術による生体機器は魅力的過ぎてテンション爆上がり。『イグジステンズ』のゲームポッドや『裸のランチ』のバグライターを超えるフェティッシュな玩具的興奮。科学や医学より人間の可能性を過激に追究するアートという危険なメソッドの力が爆発している。

この短評にはネタバレを含んでいます
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