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Pearl パール (2022):映画短評

Pearl パール (2022)

2023年7月7日公開 102分

Pearl パール
(C) 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved.

ライター10人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

轟 夕起夫

ミア・ゴス、君は天然色。けれども流れ出すのは虹の幻

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

製作総指揮、脚本、主演ミア・ゴスの、傷だらけの“ハリウッドスマイル”の破壊力に胸打たれる。画竜点睛、ここで使われたアイリスアウトは、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(23)のそれよりも効果的だった。

総天然色の中の「アメリカの影」を描き出し、実在したハードコアポルノ『A Free Ride』(1915)をダイレクトに引用、タイ・ウェスト監督ならではの「映画についての映画」であり、批評性が高く、第一部『X エックス』(22)の単なる前日譚に収まらず、上書き度がエグい。

当然、ヒロイン目線で全篇を眺めてしまうが、彼女の夫の立場、その胸中を想像すると絶句するしかない感慨へと達するだろう。

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ミルクマン斉藤

ミア・ゴス爆裂。ラストショットは永遠もの。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作のフォーマットに則って展開する、『X』の正規の続編だが、これほど前作を軽く超えたパート2は非常に稀。観客はやがて主人公が殺人鬼となることを前提に観ることになるが、タイトル文字、そして音楽からして想起させるのは50年代ハリウッド全盛期の、とりわけダグラス・サーク調のテクニカラー・メロドラマ。ま、1918年という設定とは矛盾があるにしろ、古き良きハリウッドに憧れ、厳しい現実に絶望せざるを得ない少女の無念さには共感しか湧かないし、前作での老いたパールの身のこなしの理由を彷彿とさせる全身不随に陥った父親の疾患など、明示はされないが清教徒的に許しがたい瑕がパールの風景を深化させることになっている。

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森 直人

びっくりするほど素晴らしい

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

まさかタイ・ウェスト監督がここまでハネるとは! 前作『X エックス』のボディが『悪魔のいけにえ』なら、今回はMGMの『オズの魔法使』。ミッドセンチュリー風の総天然色(テクニカラー)にスカムなB級ホラー/スラッシャーをぶっこんだら、とんでもない電磁波が発生。「混ぜたら危険」な実験に勢いよく飛び込みつつ、めちゃめちゃ丁寧に作っている。

同時に田舎で鬱屈しているパールの心情――自己実現の不全感もよく伝わる。切ないお話ではあるが、でも冒頭からガチョウを突き殺してるし(笑)。脚本と製作総指揮にも参加しているミア・ゴスの才人ぶりが際立つ。新スーパーマンに抜擢されたデヴィッド・コレンスウェットにも拍手!

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猿渡 由紀

ホラー映画の怖い人にこれほど共感できるとは

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

「X エックス」のプレクエルで、オリジンストーリー。だが、こちらのほうがあらゆる意味でもっと優れている。主人公パールが複雑で、夢、希望、絶望、苦悩を抱えたひとりの若い女性としてしっかり書かれているのが、一番の勝因。ホラー映画で怖いことをする人にここまで共感できたことがあっただろうか。現実から目を背けるうちに、彼女の中でそれがごっちゃになっていく様子がよくわかる。ジャンルへの偏見のせいで賞レースには引っかかってこなかったものの、ミア・ゴスの演技はまさにトップクラス。数分間、ノーカットでひとり語りしながら微妙に感情、表情が変わっていくクライマックスにはとりわけ圧倒された。

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相馬 学

笑って踊って、ファーストキル

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『X エックス』はとてつもなく面白いホラーだったが、その前日談となる本作はエグいスプラッター色もそのままに、まったく異なるカラーを出してきた。

 不自然なほどの笑顔が特徴的な戦前のミュージカル色を生かしながら、薄氷を踏むような不気味さを漂わせ、ここぞという場面でショック描写が。前作とはベクトルがやや異なるミア・ゴスの怪演にも目を見張った。

 前作の老婆の残虐性や無邪気さ、性欲過多をきっちり踏まえながらも、ヒロインの孤独や不満、いらだちが見据えられ、暴走に説得力を宿らせる。トリロジーをしめくくる次作も期待大!

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なかざわひでゆき

古き良き美しきアメリカの残酷な裏側

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 時は第一次世界大戦とスペイン風邪の感染拡大に揺れる1918年、主人公は映画スターを目指す素朴な農家の女性パール。しかし、娘として妻として家庭に縛り付けられた彼女は、華やかな世界への憧れと厳しい現実の狭間で、次第に狂気を暴走させる。お婆ちゃん殺人鬼パールの誕生秘話を描く『X エックス』前日譚。まるで黄金期のハリウッド映画を彷彿とさせるテクニカラー風の色彩と明朗快活な語り口が、むしろその裏側で抑圧された人間の醜い情念を際立たせ、古き良き美しきアメリカ社会が誰の犠牲の上に成立していたのかを改めて知らしめる。怖さよりも痛々しさや哀しさを覚える映画。夢を見れない人生。そりゃ狂うしかないよな…。

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くれい響

ガチで『Xエックス』は、序章にすぎなかった!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『悪魔のいけにえ』オマージュにしてはユルすぎた『Xエックス』の続き、知る人ぞ知る『赤い斧(ヴァージン・スローター)』オマージュ。「タイ・ウェスト監督、何処へ行く?」と思いきや、1918年の作り込まれた世界観で、サクサクとおばあちゃん殺人鬼誕生が語られる。ダグラス・サーク監督作から『オズの魔法使い』までクラシカルな味わいたっぷりのなか、毒親による生き辛さ+スペインかぜのパンデミックという現代社会に通じる設定も効きまくり。ラストカットも含め、ミア・ゴス無双だ。前作のポルノ映画に続き、今回はブルーフィルムがキーワードになっており、1985年のLAが舞台の最終章『MaXXXine』が俄然楽しみに!

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村松 健太郎

深みを増したプリクエル

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作『Xエックス』はある種の”仕掛け勝負”な映画で、それはそれで楽しめたもののそこまでのものという感覚もありました。ところが、その続編であり前日譚である本作は、想像以上に深みを増した、ダークヒロインの物語として堪能しました。主人公のパールが持つ、どうしようもない”闇”をミア・ゴスが実に活き活きと怪演。この一本で新たなホラーアイコンに昇りつめました。監督のタイ・ウェストもいよいよ新世代のホラー映画の担い手となりましたね。
前作に引き続き、名作ホラーへのオマージュや画面全体に漂う”時代感”の再現も楽しかったです。

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平沢 薫

映画の魔に憑かれた娘が迷路を駆け抜ける

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ミア・ゴス主演の三部作第二作は、前作『X エックス』に登場したパールの若き日を描くもの。1918年、テキサスの貧しい農場の娘パールが、ある日、映画館で、スクリーンの上の光り輝く別世界に出会う。この映画の冒頭もエンディングも、色彩も、クレジットの様式も、その文字の書体も、そして音楽も、その時、パールが見た別世界にそっくりの古き良きハリウッドのミュージカル映画の形式。パールがカカシに出会うなど『オズの魔法使』のイメージも重ねられている。映画というものの目が眩むほどの輝きと、その周囲につきまとう薄暗くいかがわしいものが織りなす迷路を、パールが駆け抜ける。ラスト近く、ミア・ゴスの表情が物凄い。

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斉藤 博昭

「原点」に時間を戻して、ここまで鮮烈に迫る作品も珍しい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

もちろん「将来『X エックス』のサイコ婆ちゃんになる」との前提は頭に入れておきつつ、完全独立した物語として異様な世界へ連れて行かれる。もちろん“繋がり”は多数登場するが…。
スペイン風邪が流行した100年前が舞台なので現代のコロナ禍との重なりも生々しいが、オープニング映像、音楽の使い方など全体の作りは1950〜60年代クラシック風というのが超絶味わい深い。ヒッチコック名作への明らかなオマージュに、描かれていること以上の怖さが充満。ミュージカル映画に魅せられる主人公なので、そのタッチの演出もテンション上げる。
これからの人生を覚悟する主演ミア・ゴスのアップの演技は、近年の全俳優で最高レベルでは?

この短評にはネタバレを含んでいます
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