クライム101:映画短評
ライター6人の平均評価: 4
強盗ほどキビシい商売はない!?
群像劇のスタイルをとりながら、犯罪計画の行方をスリリングにまとめる、『アメリカン・アニマルズ』のレイトン監督らしいスケッチ。そこに彼の美学を見た。
強盗犯と刑事の攻防という大きな縦糸は一見すると『ヒート』風だが、むしろシリアス版『スモーキング・ハイ/暗殺者がいっぱい』といった趣向。『ヒート』の時代のようなクールな男はここにはおらず、誰もがとにかく必死。そこが今風であり、レイトン監督の生々しいタッチも生きる。
老いも若きも入り乱れ、世代間闘争の様相も。M・ラファロやH・ベリーの枯れ感は世代的にフィットするも、それを単純に落ち着かせない若者代表B・コーガンの不穏が物語を面白くする。
観客を「選ばない」犯罪アクションの真髄
これを最後の仕事と決め、男は過去を清算すべく計画を遂行した…。王道犯罪ムービーの香りが充満するなか、あちこちに人間の善と悪の両面を醸し出させ、終盤に向けて盛り上げる構成も考え抜かれた逸品。基本的に誰が観ても満足度が高いのでは?
主人公が犯罪者なので、悪の魅力で惹きつけるか、あるいは切実な状況に同情するか、どちらかに傾くかと思いきや、クリス・ヘムズワースが演じているためか、その中間点くらい。悲壮感と豪快さが混じり合う快感。観ているこちらの感情に揺さぶりをかける設定、キャスティングの妙に酔う。
コンタクトレンズ、わずかな血痕など細部のネタも効果的で、職場での男女差別といったテーマも物語にフィット。
見応えたっぷりな骨太サスペンス
アメコミ周りのキャストが揃った感のあるクライムサスペンス。2時間を超える上映時間ですが、飽きることなく最後まで見せ切ります。監督の手腕もあると思いますが、ここはやはりキャストと力量によるところが大きいでしょう。主役の二人はもちろん脇役も実力派が揃い、どの場面でも画が非常に強く物語をグイグイと引っ張ってくれます。各々仕事に準じているようでありながら、何処か個人の気持ちを残し、その両方のバランスを取ることに四苦八苦する姿が非常にリアルで、感情移入しやすかったです。サスペンスとしてもオチも含めて巧くまとめている見応えたっぷりな骨太作品です。
対峙する2人を囲むアンサンブルが魅力的
売り文句で『ヒート』を引き合いに出しているが、例えソーVSハルクでも、1995年当時のデ・ニーロVSパチーノのインパクトには及ばないのは事実。そのため、想像通りの暴走キャラを演じてくれるバリー・コーガンや、出番はわずかであっても圧倒的な存在感を放ち、しっかり怖いニック・ノルティなど、対峙する2人を囲むアンサンブル、そして怪しげなLAの夜の方が魅力的に映る。近年、めっきり減ったオトナのためのクライム・スリラーとしては評価したいが、前半の緩いテンポに2026年の作品らしさはなく、結果タランティーノやS ・クレイグ・ザラー監督作でもないのに、140分の上映時間はやや冗長にも思える。
ロサンゼルスの夜景が傾きを変え続ける
冒頭、滲む光の群れが、次第にロサンゼルスの夜景に姿を変えながら、逆転した水平線の傾きを変え続ける。その不安定さは、主人公の心理状態でもあり、この世界の状況でもあり、作中何度かスクリーンに広がる。撮影は『BETTER MAN/ベター・マン』でロンドンを活写したエリック・ウィルソンだ。
それぞれに問題を抱える人間たちの群像劇に相応しく、出演陣が豪華。クリス・ヘムズワースの無口な犯罪者、マーク・ラファロの組織から煙たがれている刑事、バリー・コーガンの無鉄砲な若造に加えて、ハル・ベリー、モニカ・バルバロ、コーリー・ホーキンズも。ニック・ノルティ演じる老犯罪者の佇まいが、凄みと狡猾さを漂わせて圧巻。
最高の“普通”の映画
映画ファンなら観逃さないで欲しい。賞レースを狙うわけでもなく、シンプルに上質な仕立ての娯楽映画を目指したモダンクラシックの登場だ。ウィンズロウの原作小説を受け継いでS・マックイーンへの愛を具体化し、『ブリット』の都市型アクションと『華麗なる賭け』の洗練が米西海岸ハイウェイ101号線に蘇る。
W主人公の構図は『ヒート』由来。C・ヘムズワースの完璧主義の強盗と、M・ラファロのベテラン刑事(ソーvsハルク!)が互いにプロの勘で響き合う。B・レイトン監督は『アメリカン・アニマルズ』で見せた映画的センスと批評性をさらに磨き、格差社会への視線を物語に忍ばせた。王道の香りと現代性が心地よく混ざり合う逸品。

























