ザ・ブライド! (2026):映画短評
ライター8人の平均評価: 3.6
ジェンダー・バイアスを解放す
マギー・ギレンホールの監督2作目。初監督作『ロスト・ドーター』と作風は違えど、視座は変わらない。前作は「母」の概念から逃れられない女性の苦悩を描いたたが、今作ではジェンダー・バイアスを解放。博士役をアネット・べニング、刑事の相棒役にペネロペ・クルスと、これまでの`30年代を舞台にした作品にはみられない配役。何より元ネタの『フランケンシュタインの花嫁』の脇役を主役にし、花嫁のイメージをもぶっ壊す。主演のジェシー・バックリーは2作続けての出演。彼女の才能に惚れ込んだ監督は独白シーンを盛り込み、見せ場も用意した。だがそれは疾走感ある物語の足止めとなってないか? 賛否の分かれるところだ。
『ハムネット』のB-sideとしても興味深い
ジェシー・バックリー主演の二次創作系ワンセット――『ハムネット』が“妻”の主体奪還なら、こちらはハーレイ・クインの如き“花嫁”爆誕。盟友M・ギレンホール監督との再タッグで古典的キャラクターに強烈な生命力を吹き込む。1935年の『フランケンシュタインの花嫁』を下敷きに、怪奇物やギャング映画の形式を自在に借りながら“花嫁”をパンクな主役へと引き上げる。
花嫁と怪物の逃避行はボニー&クライド風の犯罪ロマンスであり、抑圧された者の連帯を描く寓話でもある。ギレンホールは男性優位の抑圧を見据え、『メアリーの総て』が照らした原作者M・シェリーの苦悩を現在へ接続し、コミック調で鮮やかな再構築の手腕を見せる。
彼女はただの“妻”ではない
『フランケンシュタインの花嫁』を下敷きにしつつも、古典ホラーの定型を避けたつくり。それは“花嫁”のキャラクターを見れば一目瞭然だ。
フランケンシュタインの怪物はもちろん恐ろしいが、それ以上に花嫁の狂気が際立つ。殺されて人造人間として復活する、その姿に悲壮感は皆無で、むしろ圧倒的な自由を手に入れた喜びが先行。エネルギーが随所で暴発し、女性が主導する『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のようにも映る。
監督2作目となるM・ギレンホールは花嫁を“パンク”と表現しているが、それも納得。抑圧されてきた現代女性の怒りやいらだちの象徴ともいえそう。
野心たっぷりながら途中で息切れする感じ
30年代の映画で勝手に死から蘇らせられ、知らない男と結婚させられた“花嫁”は、心の中で何を思っていたのか。そこから出発したこの映画は、女性を主人公に据え、彼女が自分でいろいろ発見していく過程を描く。フェミニズム目線のそのコンセプトは大きく評価。だが、思いつく要素を盛り込みすぎたがために、話があちこち行き、焦点が弱まってしまった。ジェシー・バックリーの花嫁、クリスチャン・ベールによるフランケンシュタインも、最初は強烈なインパクトがあるのに、ふたりのコネクションが掘り下げられず残念。すごくかっ飛んでいるかというとそこも中途半端。野心はたっぷりながら、途中で息切れしてしまう印象の映画。
ジェシー・バックリー狂い咲き!
オスカー受賞直後という、最高のタイミングで公開となるジェシー・バックリー最新作。ホラークラシック『フランケンシュタインの花嫁』に『俺たちに明日はない』を掛け合わせたようなハイテンションなホラー&クライム&ロードムービー。色々取り込み過ぎて一歩間違えると散漫な映画になってしまいがちですが、主役の二人を含めた芸達者な面々の好演と監督としてのマギー・ギレンホールの巧みな演出が合わさって最高の一本に仕上げました。ダークで、ブラックで、バイオレンス描写たっぷりな映画なのに見ていて最後まで痛快、爽快な気分でいられました。お見事です。
花嫁に声を与えた「フランケンシュタインの花嫁」の大胆な翻案
ユニバーサル・ホラーの傑作『フランケンシュタインの花嫁』の翻案…といっても、フランケンシュタインの怪物に花嫁をあてがうという基本プロット、原作者メアリー・シェリーが登場して「続きの物語」を語り始めるという導入部以外は、ほぼ原形を留めていない。最大の違いは、オリジナルでは出番の少なかった花嫁を主人公に据え、「女が欲しい」という男の勝手な都合で蘇生された彼女に意志や主体性や言葉を与えることで、現代的かつ普遍的なフェミニズムのメッセージを全面に押し出していること。怪物との無軌道な逃避行はボニー&クライドの如し。ラスボスたる暴君の牛耳る暗黒街は、トランプ政権下のアメリカ社会のメタファーと言えよう。
凶暴な魂が伝染する
モンスター映画であり、愛の物語でもある。今、フランケンシュタインの花嫁を描けば女性の権利映画になりそうなところ、そこをはみ出すのが監督マギー・ギレンホールの凄さ。ヒロインに、原作者メアリー・シェリーの意識が侵入するという設定も秀逸。ヒロインの凶暴な魂が、暴力の形で発揮されるのではなく、舞踏で表出され、それが周囲に伝染していく、という物語も唸らせる。撮影と音楽は『ジョーカー』と同じ、ローレンス・シャーとヒルドゥル・グーナドッティルだ。
ジェシー・バックリーが2役で演じる、ヒロインとメアリー・シェリーが、『ハムネット』の主人公とはまるで別人。魅惑的なシェリーに、バックリーの演技力を再認識。
不死の肉体なので、やりたい放題の豪快さとエグさに身を任せて
フランケンシュタインと花嫁という“人造”キャラが織りなすドラマはあくまでスタートポイントで、全体としては懐かしの『ナチュラル・ボーン・キラーズ』あたりを思い出す、愛と狂気の逃避行。リミッター外した2人の行為は、観ていて痛快な域に突入していく。
どうしてもギレルモ・デル・トロの近作とダブる部分があるが、こちらのC・ベールの方が繊細さに欠ける分、常軌を逸した感が勝り、好みは分かれそう。ブライド役J・バックリーは、日本ではほぼ同時公開の『ハムネット』と観比べれば、演技者としての振れ幅が恐れをなすレベルだ。
フェミニズム的な視点は、P・クルスのサブキャラが担っており、不覚にもテーマが後から競り上がる。




























