プロジェクト・ヘイル・メアリー (2026):映画短評
ライター8人の平均評価: 4.1
ライアン・ゴズリングは転生したジミー・ステュアートだ
「中学の科学教師グレース、宇宙へ行く」であり「素晴らしき哉、天空人生!」。主演のライアン・ゴズリングは転生したジェームズ・ステュアートだ。そして本作は、現代のキャプラ映画である。過酷な境遇と格闘するエブリマン(ありふれた人)をカトリック的に顕揚した監督フランク・キャプラ。こんなご時世だからこそ一層、善性を称えた楽観性が沁みる。
イントロ掴み曲、万歳! 一時、イントロなしソング流行と言われ、原作並び映画の推進力のひとつ、ビートルズにも多いのだが、枠に囚われない彼らの楽曲「トゥ・オブ・アス」のイントロがかかる瞬間、カラダ中に電流が走る。その歌詞や4人の友情も含め、胸熱展開とマッチしていてベスト。
ファースト・コンタクトを描く良質なポップコーンムービー
迫りくる地球滅亡の危機を救うため銀河系の彼方へ旅立った宇宙飛行士が、そこで地球外生命体に遭遇する…というプロット自体は極めてありきたり。本作がユニークなのは、それを徹底した科学的リアリズムで描いている点にあるだろう。時間軸を行き来しながら全体像を詳らかにしていく複雑な構成を含めて、なんとなくクリストファー・ノーラン的な作家性を感じさせるのだが、しかし物語の核となる言葉や文化や種族を超えたエイリアンとの友情と信頼というテーマは非常に分かりやすい。少々過大評価されているように感じなくはないものの、とはいえアメリカ映画の良心と良識を継承した上質なポップコーンムービーであることに変わりはないだろう。
ひとり芝居の状況でゴズリングが魅力を発揮
宇宙にひとり取り残された学校の先生という主人公に、好感度と共感度たっぷりのライアン・ゴズリングは最適のキャスティング。リラックスしたユーモアとカリスマを兼ね備えた彼は、ほぼひとり芝居の状況で観客に思い入れさせ続ける。それでも、ペースが不均等でダレる部分があるのはたしか。ひとつには、焦点である友情のところに持っていくまでが長い。この監督コンビらしくコメディはたっぷり。泣かせどころもあるのだが、「狙ってました」というように感じるのはこちらがひねくれているのか。ザンドラ・ヒュラーは、ハリウッド大作にもったいない形で起用された数多くの海外の名優リストに加わってしまった(もちろん彼女のせいではない)。
不条理に始まり、感動に着地! 構造の妙に酔う
人類滅亡の危機を回避するための宇宙飛行を描いた作品は珍しくない。それらの多くは、危機がどれほど大ごとかを描いて始まるが、本作では原作に則り、そんな定番展開を解体して提示する。
機械室のようなところで目覚めた主人公は、なぜ、何のためにここにいるのかもわからない。そんな冒頭のミステリーで引き寄せつつ、地球の現状を明かしながらSFへと転がっていく。この斬新な構成に引き寄せられた。
主人公の悪戦苦闘が醸し出すユーモアゆえに、緊張が緩む局面は多いが、それもまた味。異星生物との交流時を含めて時として危機を忘れさせ、物語に緩急を植え付けるR・ゴズリングの妙演がみごと。
『オデッセイ』同様、ドリュー・ゴダードによる脚色が凄い!
とにかく、何より原作ファンを優先した映画化。宇宙船内で目覚めた主人公が、次第に記憶を取り戻していく過程を、フラッシュバックしながら丁寧に描いており、前半パートに関しては正直、疾走感が売りだったフィル・ロード&クリス・ミラー監督作にしては若干のモノ足りなさもある。とはいえ、絶望を経た予期せぬバディムービーと化した瞬間、観る者も別次元に飛ばされることに! 個人的には『オデッセイ』に軍配が上がってしまうものの、同じドリュー・ゴダードによる脚色や強気すぎるエヴァ役にどハマりなザンドラ・ヒュラーなど、あの原作に果敢に挑んだ意欲は高く評価したい。
チャーミングでユーモアたっぷり
『オデッセイ』のアンディ・ウィアーの小説の映画化ということで類似箇所も多く感じた一本。お話にだけ着目するとかなり深刻なことになっているのですが、『オデッセイ』同様、主人公は孤独ではあるものの絶望しきってない人物で、常にどこかにユーモアを感じさせます。このキャラクターを演じたライアン・ゴズリングはほぼほぼ一人芝居と言っていい状況なのですが、最後まで映画を牽引してくれる頼もしさを感じました。そんな彼に思わぬ形で意外な相棒が登場するのですが、このキャラクター造形がまた良かったです。全編通して非常にチャーミングな作品でした。
監督コンビの原作愛が伝わってくる
監督コンビが「物語の核にあるのは人間とエイリアンの絆」と確信、「言葉で説明するのではなく、目で見て分かるように描く」というコンセプトを実践し、感動の物語を描き上げる。長尺になったのは、監督コンビの原作愛のせいだろう。主人公が宇宙船に乗ることになった経緯が少しずつ明かされる謎解き仕様をはじめ、主人公のユーモア感覚や前向きな性格、彼が直面する不測の事態の数々から、エイリアンの習慣まで、原作の要素が大量に投入され、監督コンビのあれもこれも全部入れたいという気持ちが伝わってくる。
巨大な宇宙空間の映像は大画面向き。船外に広がる宇宙に果てがない。ある星の近くで主人公を囲む情景は大画面で体感したい。
★5つではまったく足らず。あの原作をよくここまで…
地球から遠く離れての孤独ミッションは想像を超える過酷さも、本作の主人公はポジティヴに軽やかに受け止め、映画を観るわれわれもその気持ちを共有。原作のスピリットを踏襲し、映像化で不安だったロッキーの造形や言葉遣い(原作の訳が絶品)も、文章ではなく「動きを見せる」ことでアップデート成功に。
原作同様、科学や論理はスルーしてもドラマの本質はブレず理解できるので心配無用。当初、原作を先に読むことを勧めたかったが、むしろ映画で初体験の方が感動が大きいかも。
宇宙船内外のデザインと機能があますところなく魅了し、Tシャツなど細部の楽しさ、テンポの良さ、R・ゴズリングゆえのバディ感の切なさで至高の映画体験に。





























